第52回 知ってほしいクルドの味
「これを団子にするんです。さあ、手にオリーブオイルを塗って」と、スープ担当の女性に促されて手の平にオイルを塗る。団子を丸めやすくするためのようだ。よーし、やるぞと意気込むが、またびっくり。団子というからミートボールサイズかと思いきや、大豆サイズじゃないか。生地はハンドボールくらいの大きさがある。これから大豆サイズの団子を一つひとつ丸めるのか……。
「これはなかなか根気のいる作業ですねー」と生徒の一人が笑った。「ほんと、ほんと」と、団子を丸めながらの会話が弾む。クルドの女性たちも世間話をしながらみんなでつくるそうだ。「粘土遊びみたいで楽しいね」。そうMちゃんが言うと、「楽しいのは最初だけで、だんだん面倒になるんですよ」とクルドの女性たちは笑った。
団子づくりに没頭しているうちに、ナスとピーマンの具材詰めが始まったようだ。いったん手を止めて見にいく。具は米にひき肉、トマトペースト、みじん切りにした玉ネギとニンニクを混ぜ、塩コショウと唐辛子、レモンスズなどで味付けしたもの。レモンスズとは粉末レモンのようなすっぱい調味料。クルドの家庭には必ずあり、サラダなどいろいろな料理に使うそうだ。
「ひき肉は羊です。クルド人は羊が一番好きで、私が生まれた地域ではみんな飼っています。山の草を食べさせる夏はミルクやチーズがすごく美味しいんですよ。料理に羊の脂を使うことも多い。うちは6人家族だから一カ月に30キロくらい食べますね」
グレさんが言う。1人当たり5キロとはけっこうな量だ。具材はナスやピーマンにつめるほか、塩漬けにしたブドウの葉でも巻く。「ブドウの葉はやわらかいので小さな子どもでも食べやすい。クルドでは歯が生えてきたら、この料理を食べます」とグレさん。離乳食くらいの時期から食べるってことか!?
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