第51回 麺大国・中国 驚きの麺料理バリエーション

「私の家は省の北部にあったのでより気温が低く、土地も痩せている。小さな頃は小麦粉がまだ貴重でしたから、刀削麺よりヨウ麺のほうがよく食べていましたね。でも、このせいろ蒸し麺はつくるのが難しいんです。生地を均一に薄くして丸めないと蒸すときにムラができてしまう」

 李さんは料理上手なお母さんに教わり、毎日のように練習してつくれるようになったというが、いまはこのえん麦が小麦粉より貴重で高くなってしまったこともあって、女性でも上手につくれる人は少ないらしい。

「子どもの頃は家庭料理だったけど、いまはお店で食べるほうが多い。でも、日本にはこの料理を出すお店もありません。刀削麺にしても、お店はたくさんあるけれど西紅柿・鶏蛋麺があるところは少ない。来日して中華料理店に勤めていた私に、何人もの同郷の人間から故郷の麺が食べたいといわれたので、山西省の料理店を開いたんです」

 李さんの言葉に麺料理の奥深さを感じながら、ヨウ麺をかみしめた。かつて訪れた黄土が舞う山西省の素朴な町で食べた、あたたかな刀削麺の味を思い出した。

山西亭
東京都新宿区大久保2-6-10 B1F
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中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮