第51回 麺大国・中国 驚きの麺料理バリエーション
そこに「ジャガイモは穀物じゃないですね」とKさんの素早いツッコミ。確かに……でも、緑豆の麺なんかもあるらしい。穀物と同じような食べ方もするから含まれるのかもよ、広い大陸だからきっと細かいことにはこだわらないんだよ、とKさんに適当なことを言って、この2つを食べてみることにした。
先に出てきたのはジャガイモ麺。香ばしく炒めてあるが、小麦粉をまぶして蒸したジャガイモはもちもちとしていて確かに麺っぽい。細切りとあったが、小麦粉にマッシュポテトを混ぜてつくるニョッキのような感じなのかも。塩、ネギ、唐辛子、ニンニクによる味付けはピリ辛く、ついつい後を引く味だ。
えん麦のせいろ蒸し麺は、トマトダレか山西省の名産である黒酢をベースにしたタレにつけて食べる。せいろのふたを開けると、湯気とともにもち米を炊いたときに近い、独特のにおいが立ちのぼった。筒状になった麺は直径2センチ、長さ3センチほど。薄さは1ミリにも満たないがもっちりとして食べごたえがある。
「ちょっとクセのある味ですけど、この麺にもトマトが合うんですね」とKさんが言う。甘み引き立つトマトダレもいいが、酸味がさっぱりとしていながらコクがある黒酢が個人的には気に入った。
「中国でもヨウ麺を食べているのは山西省と内モンゴルの方くらいなんですよ」と李さんは言う。黄土高原の東部に位置する山西省は、その大部分が標高1500メートル以上と高く乾燥地帯であるために稲作ができず、主に小麦が栽培されている。しかし、昔は小麦をつくることも難しく、えん麦などの雑穀が主流だったようだ。こうした雑穀を美味しく食べる工夫をしていくなかで、麺食が発展したのではないかとも言われている。
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