第51回 麺大国・中国 驚きの麺料理バリエーション
李さんの言葉を聞いて、思い出の味をいただくことにした。出てきたどんぶりの中には潰したトマトと炒り卵がたっぷりかかった刀削麺。しっかりと混ぜてから麺をすすると、トマトの香りがふわりと広がった。シンプルな塩味でさっぱりとしているが、トマトの甘みや玉子のまろやかさが麺を包み、なんともやさしい味わいだ。
トマトって麺に合うんだな~としみじみ堪能していたら、「やたらと麺が太いトマトソースパスタって感じですね」とKさん。あ、そうか、そりゃ合うはずだ~ってKさんたら冷静。ちなみに、刀削麺をつくるにはへの字に曲がった長方形の専用包丁を使うが、持っていない家庭も多く、その場合は食感が少し異なるものの、普通の包丁で生地を切るという。それを聞いたKさん、「うどんですね」。だから、冷静すぎだって……。
さて、刀削麺をじっくり楽しんだところでやはり麺のふるさと、他の麺も食べてみたい。メニューを覗き込むと、そば粉の麺にえん麦の麺と約20種類の麺料理が並んでいる。えん麦の麺は現地でも食べたなあと思い出していたら、「ブランズ」というジャガイモの蒸し麺焼きそばなるものが目に飛び込んできた。細切りにしたジャガイモに小麦粉をまぶして蒸すらしい。
ジャガイモの麺なんてあるのかと驚いていると、さらに「これも麺なんでしょうか」とKさん。視線の先には「ヨウミェンラオカオカオ」の文字。えん麦の一種であるヨウ麦の麺のせいろ蒸しということのようだが、写真にあるのは薄い筒状の生地をハチの巣のように並べた不思議な料理。「麺料理には見えないけれど……」と言うと、李さんは笑って説明してくれた。
「中国では穀物の粉を練った生地を使うものは麺というんですよ」。もともと麺は小麦粉という意味だったが、いまはほかの穀物の粉にも用いられるようになり、広くとらえれば餃子やワンタンも麺となるらしい。そういえば、現地には雑穀麺の専門店もあったし、トウモロコシ粉を使った蒸しパンのような料理も麺のメニューの中にあった。刀削麺一つにいてもいろいろな具がある。そう考えると麺料理300種というのもわかる気がしてきた。
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