第51回 麺大国・中国 驚きの麺料理バリエーション
と、思わずスルーしてしまうところだったが、麺料理が100種類以上!?「300種とも400種とも言われているみたいですよ」とスマホで調べてくれたKさんが言う。確かに現地には麺料理の店がたくさんあったが、それほどとは……。山西省の人の多くは毎食のように麺を食べるそうだ。「麺がなくなったらお米を食べるという感覚です。主人はお米も食べるけど、私は一年に3~4回くらい。それ以外はほとんど麺を食べています」と奥さん。驚く私たちに、李さんはメニューを開いて説明してくれた。
「一番有名なのは刀削麺ですね。山西省は刀削麺発祥の地と言われているんです」
そうそう、刀削麺は現地で食べました。担々麺やジャージャー麺(炸醤麺)などとともに中国を代表する麺の一つに挙げられる山西省の名物で、小麦粉をこねた生地の塊を板に乗せ、包丁でそぎ落として鍋にいれていく。一説では、元代に統治者のモンゴル族によって武器と一緒に包丁まで没収された漢人が、包丁の代わりに薄い鉄片で生地を削って麺を作ったことに由来するというが、そのパフォーマンスが日本でも何年か前に流行ったなあ。
「でも、日本で食べる一般的な刀削麺はスープの中に入っていますよね」と李さん。山西省ではスープに麺を入れるというより、麺にタレを絡めて食べるという感覚らしい。「とくに山西省の人間が好んで食べるのがこれです」といっていくつもある刀削麺のメニューの中で、李さんが指したのは「西紅柿・鶏蛋麺」。日本語にするとトマト・玉子の麺という意味だ。
普段食べる中華のイメージからか、肉が入っていたり、脂っこかったりするのかな、と思っていたから少し意外だった。
「昔の山西省では肉が貴重な食べ物でした。だから日常的に食べる刀削麺に入れることはなかなかできません。でも、トマトは育てるのが簡単なので、みんな自分で育てて刀削麺に入れて食べるんです。刀削麺と聞いて山西省の人間がイメージするのがこの西紅柿・鶏蛋麺。子どもの頃から慣れ親しんだ味なんですよ」
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