第67回 フィリピンの“サリサリ”な豚肉料理
確かに、料理も他の国に比べたら知られていない。しかし、在日フィリピン人は中国、韓国、ベトナムに次いで多く、26万人以上いるという。問屋業は故郷の味を求めていた人々に応えるように全国へと展開を広げていった。その後、店舗の拡大とともにレストランをオープン。「料理も冷凍して発送しているので、この店はアンテナショップのような役割も果たしているんですよ」と通さんはいう。
それにね、とアンナさんが言葉を継ぐ。「家族で来て奥さんが買い物をしている間、ご主人は居場所がないでしょう。だから、食事や喫茶ができるスペースをつくろうと思ったんです」。
フィリピンにはスーパーなどの小売店が全国に約93万店あり、そのうちの81万店がサリサリストアで、食料品、日用雑貨における売り上げシェアの7割を占めているという。生活とかなり密着していて常連であればツケがきき、その地域のちょっとした社交の場でもあるようだ。コンビニのようなものといったが、昔は日本にもあちこちにあったよろずやに近いかもしれない。おばあちゃんがよく駄菓子を買いに連れて行ってくれたことを思い出す。
「うちも常連さんが多く、みんなお店に来るのが楽しみだといってくれます。私もみなさんと会えるのが楽しみ。サリサリストアは買い物をして、おしゃべりをして、時にはお茶や食事もする、フィリピン人にとってとても大切な場所なんです」
そう言って、アンナさんは食事をしにきた常連さんに挨拶に向かった。談笑する彼女たちの姿を見ながら食べるシニガンは酸味以上に温もりを感じた。

Ana's Sari-Sari Store(アナスサリサリストア)
埼玉県戸田市美女木2-1-12
電話:048-449-8523
ホームページ:http://anastrading.co.jp/
中川明紀(なかがわ あき)
講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮
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