第67回 フィリピンの“サリサリ”な豚肉料理
都内で用事を終えた帰り、小腹を満たそうとフラフラと駅前を物色していた時のこと。あきらかに異国のにおいがする派手な看板が目に留まった。ガラス戸越しに覗くと棚には食材や調味料、日用雑貨が並んでいて、イートインスペースもある。おもしろそうなので中へと入る。
「ここはサリサリストアですよ」
レジに立っていた店員さんが教えてくれた。「サリサリ」はフィリピンの言語の一つ、タガログ語で「いろいろな」という意味で、サリサリストアとは「いろいろな物がある店」、つまりフィリピンのコンビニエンスストアというわけだ。駅の売店のような店から食堂を併設したところまで、規模はさまざまだが、フィリピンには小さな集落にも必ずサリサリストアがあるらしい。
さっそくイートインのメニューを見る。肉や魚の料理とご飯がプレートに載ったセットメニューが中心のようだ。せっかくならフィリピンのソウルフードが食べたい。しかし、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「ちょうど今、従業員みんなで食事をとったところでご飯がなくなっちゃったのよ」
えーっ! 食べちゃったって、まだ日も暮れてないよ。まかない早すぎるだろ……。心の中でツッコミつつも、ないのであれば仕方がない。気を取り直し、ソウルフードだけでも尋ねてみる。
「シニガンはとてもよく食べますよ。あと、アドボもみんな大好きね」
シニガンは知っている。酸味の強いスープだ。以前、上野のアメヤ横丁でインスタントのシニガンスープの素を買ってつくったことがある(第38回参照)。アドボは煮込み料理らしい。店員さんは、「うちはファストフード中心でシニガンやアドボはつくっていないのよ」という。
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