第42回 親子をつなぐカンボジア版お好み焼き

 もりもり食べているうちにセレイさんがバンチャエウを焼き出した。娘さんたちも手伝う。そこであることに気づいた。カンボジア語で話すセレイさんに対し、2人の娘さんは日本語で答えているのだ。

「セレイさんは18歳の時に、すでに日本に来ていた家族の呼び寄せによって来日しました。だから簡単な日本語は話せるけど、込み入った会話はできません。いっぽう、娘さんたちは日本生まれ。普通の学校に通うから日本語は問題ないですが、逆にカンボジア語が話せないんです。お互いに言っていることは理解できるから日常の会話は成り立つ。でも、難しい話になると伝わらないこともでてきます」とカンナさんが教えてくれた。

 カンナさんの5歳の息子さんもカンボジア語が話せないという。「だから在日カンボジアコミュニティでは、定期的に子どもたちにカンボジア語を教えているんです。家族のためでもあるし、自分のルーツである国の文化を知ってもらうためでもあります」と伊藤さんは言う。

 バンチャエウが食卓に載った。黄色い生地が具を包み込んでいて、見た目はオムレツのようだ。タァック・トレイを使った手づくりソースをかけて口に入れる。見た目以上に生地がもっちもち。挽き肉やモヤシとちょっと酸っぱいソースがよく絡み、最後にココナッツの甘い風味がほんわりと残る。なんともやさしい味わいだ。

「もちもちしていて食べ応えがありますね」と言うと、「フランスの食文化の影響を受けているものの、カンボジアでは小麦粉よりも米粉が主流なんですよ」とカンナさん。米粉の細い麺、ノム・ バンチョクもよく食べるが、日本ではよく似ている素麺を代用していると言う。

バンチャエウは熱したフライパンで生地を焼き、その上に炒めておいた具材をのせる。フタをして少し蒸らすのがふっくらさせるコツ
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バンチャエウはキュウリやレタス、パクチーと一緒に食べることも多い
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