第42回 親子をつなぐカンボジア版お好み焼き

 駅から車で10分ほどのところにあるカンナさん宅のアプローチには、ミントが植えられていた。「ラオスの人たちと同じでしょ」と伊藤さん。大和センターに来た難民は、敷地のいたるところにミントやレモングラスなど料理に使うハーブを栽培していたそうだ。「みんな大きな荷物を抱えて入所するんだけど、中を見るとほとんどが食べ物や料理の道具。Tシャツ1枚で冬の寒さに震えながら、大事に抱えていましたよ」

 その荷物の中に必ずといっていいほど入っているのが石臼だという。家の中に入ると、先に来ていた在日カンボジア人のセレイさんが、まさに石臼で何かをすり潰していた。セレイさんは、フェスで店のスタッフとして参加するそうだ。さっそく何をつくっているのか聞いた。

カンナさんと息子さんのユウトくん。カンナさんは首都プノンペン生まれ。2年前に訪れたそうで「ビルがすごく増えていて驚いた」という
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「バンチャエウです」

 セレイさんはそう言って、すり潰したものを白い粉の中に入れた。そのとたんに漂ってくる独特なにおい。これは……ウコンだ。「米粉とウコン、卵、塩でつくる生地を焼いて、具材を挟むんです。日本でいえばお好み焼きとかクレープみたいな感じでしょうか」と話すのはカンナさん。日本語があまり得意ではないセレイさんの通訳をしてくれた。具材は、豚の挽き肉と玉ネギ、ココナッツ、モヤシが一般的で、たまに鶏の挽き肉を使うこともあるという。

「セレイさんは料理が得意で、みんなが集まる時にいつもバンチャエウをつくってきてくれるんですよ」と伊藤さん。「簡単につくれるし、子どもたちが好きな料理だから」とセレイさんは笑う。バンチャエウはカンボジアでも人が集まる時などによくつくるそうだ。「私もやりたい!」と、セレイさんの2人の娘さんが生地を混ぜる。料理上手な母の味、こうやって受け継がれていくんだなあ。

「これ、食べてみて」

これはアジア食材店で購入した石臼。スパイスを潰したり、サラダをつくったりするときに重宝
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インド原産とされるウコン。バンチャエウの生地の色付けに欠かせない
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