第80回 キューバの豆料理から見えてきた、社会主義国の食卓事情

 親戚や近所の人たちとも助け合う。どこで何を売っているか情報を交換し、食材を手に入れる。食卓を共にすることも多く、夕食に近所の人や友達が当たり前のように座っていることも珍しくないという。

「友達が友達を連れてくることもあるけれど、どこの家もおいで、おいで、一緒に分け合いましょうって迎え入れる。みんな貧乏だけれど、そこはいいところ」とアリアムさんが誇らしげに言う。子どもにしても、よその子も我が子と同じように面倒を見て、食事時になれば一緒に食べさせるという。その代わり、悪さをすればよその子だろうがしっかり怒るらしい。

 美香さんが「昭和の頃の日本みたいですよね」と言って笑う。そういえば私も小さな頃、近所のおばさんに怒られたなあ。あの時は怖かったけれど、間違いを間違いといってくれる大人の存在の大切さ、今ならわかる。

 フリホーレス・ネグロスを改めて口にしながら、この料理はキューバの人たちにとって食のありがたさを象徴するものなのかもしれない、と思う。そして、混ぜて食べるスタイルはきっと限られた食事をより美味しく食べるための工夫なのだ。キューバが物質的に貧しくても、人情は豊かな国なのだと知ると、その味がより一層深く感じられた。

「チャンゴ」はキューバの民間信仰「サンテリア」の神様の名前。店にはキューバ大使館の職員やキューバ出身のプロ野球選手もよく訪れるという
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SHANGO(チャンゴ)
東京都品川区中延5-13-16 パープルビル 2F
電話:03-6451-3442
ホームページ:https://www.facebook.com/hariammarti/

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮