第80回 キューバの豆料理から見えてきた、社会主義国の食卓事情

 キューバでは料理をそれぞれ大皿に盛って食卓に並べ、自分の皿に好きなだけよそって混ぜて食べるのが一般的だそうだ。今回、特別にワンプレートに乗せてくれたのもキューバのスタイルを楽しんでほしいからというアリアムさんご夫妻の温かな配慮によるものだった。それならばと豚肉やキャッサバを食べやすく切り、豪快にまぜる。大口を開けてほおばると、さまざまな味、食感が重なった奥行きの深い旨みが口の中に広がった。

 決してケンカをすることはなく、相互を引き立て合う。某グルメリポーターの名フレーズ「宝石箱や~」ってこういうことかも。「贅沢な気持ちになる食べ方だなあ」としみじみ思う。しかし、実際はこんなに多くの料理が食卓に乗ることは少ないとアリアムさんは言う。

「キューバでは食材を自由に手に入れることが難しいんです」

 アリアムさんのその言葉を美香さんが補足してくれた。「1950年代のキューバ革命以来、社会主義体制を維持するキューバでは今も食材は配給制なんです。でも、配給だけでは種類も量も足りない。だから市場などで買い足すんですけど品揃えが悪くて食材が限られてしまうんですよ」

 その中で比較的安定して配給されるのが米と豆のようだ。豆の中では黒豆が多いが、それでも常にあるわけではなく種類もさまざま。「黒豆がない時はフリホーレス・ネグロスがつくれないから、赤い豆や白インゲン豆、ひよこ豆など、その日にある豆でポタへ(ポタージュ)をつくります。赤い豆や白インゲン豆のポタへにはベーコンや豚肉を入れたりもする。卵があればそこに目玉焼きを添えるけれど、ごはんと豆しかないような日もあります」とアリアムさんが言う。

 しかも、配給品の質がよいとは限らない。「私がいた頃は脱穀機や精米機の性能が悪く、配給米にゴミが混じっているので、選別をするところから始めなければならなかった。だから、私も選別作業や料理を手伝いました」とアリアムさん。母親の手伝いをするうちに料理が好きになり、料理人を目指すようになったのだという。

アリアムさん(右)と美香さん。「キューバは沖縄と緯度が同じくらいで、気候や雰囲気が似ている。サトウキビの生産や豚肉をよく食べるところも同じですね」とアリアムさん
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