第80回 キューバの豆料理から見えてきた、社会主義国の食卓事情

 キューバではラードを使うことが多く、東部のオリエンテ地方では豚の皮を揚げたチチャロンを入れたりもするようだが、首都ハバナ出身のアリアムさんのフリホーレス・ネグロスはトラディショナルで植物性。素材にも気を遣っていてベジタリアンの客からも人気だという。

「こちらのアロス・コングリもどうぞ」

 そういって、アリアムさんの奥様の富永美香さんがもう一つのプレートを持ってきてくれた。「フリホーレス・ネグロスと同じ材料・調味料を使った炊き込みご飯です。これも国民的な料理ですが、豆を柔らかくしてから炊き込んだりと手間がかかるので週末やパーティーで食べることが多いですね」。

コングリのプレートには、エビをトマトソースで煮込んだエンチラーダ・デ・カマロネスやプランテーン(調理用バナナ)を揚げたパタコネスが並ぶ。「フリホーレス・ネグロスやコングリはトマトソースと相性がいいんですよ」と美香さん
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 見た目はお赤飯に似ているが日常的に食べる家庭もあるようで、そこまでの特別感はないようだ。豆はホクホク、ごはんも煮汁を吸ってふわっと炊きあがっていてフリホーレス・ネグロスとの食感の違いが楽しい。

 さて、ソウルフードを堪能したところでプレートを彩る他の料理もいただこう。皿の上にはキューバでよく食べられている豚肉やエビの料理、イモの一種であるキャッサバをニンニクとレモンで炒めたユカ・コン・モホなどポピュラーな品が並ぶ。どれもそれぞれにしっかり味付けがされているので一つひとつじっくりと味わう。すると突然、アリアムさんが声を上げた。

「なんで混ぜないの?」

 え、どういうこと? ごはんとフリホーレス・ネグロスだけでなく全部?
 驚いて聞き返すと「全部混ぜて食べるのがキューバスタイル。一つひとつ食べても味気ないでしょ。全部混ぜたほうが絶対に美味しいから」とアリアムさん。「いやいや、どれもそれぞれに味わい深いし、混ぜたらもったいない気がする」と言うと、「日本人はおかずをちょこちょこ食べますよね。いつもなんで混ぜないんだろうって思う」と不思議がる。