サトウカエデの樹木に採取口を取り付け、メープルウォーター(樹液)を集める。最近はこのメープルウォーターそのものも商品化されている
[画像をタップでギャラリー表示]

 サトウカエデが糖分を含んだ樹液を流出するのは雪解けの季節、3月中旬頃のほんの10~20日の間だけだという。つまり、採取された樹液を煮詰めたつくりたてのメープルシロップが世に出るのは春。冬が長く寒いカナダにとって待望の季節が到来する頃なのだ。

「この時期になるとケベックではこぞってシュガーシャックが行われます。シュガーシャックは日本語で『砂糖小屋』という意味。メープルシロップをつくっている小屋のことです。参加者はそこで生産現場を見学したり、雪が残るメープルの森を散策したりしてから食事をする。この年の新しいメープルシロップを味わうことが目的なので、パンや豚肉、ベーコン、フライドポテトなどすべての料理にシロップが使われているんですよ」

 ボリューム満点の料理を食べたあとは再び外に出る。そして、メープルタフィーを食べるという。メープルタフィーとはシロップをさらに煮詰めてとろりとさせたもの。これを雪でつくった台の上に落とし、冷えて固まりそうなところを木の棒でクルクルッと巻いてキャンディーのようにして食べるそうだ。

「シュガーシャックではもう何も入らないってくらい、お腹いっぱいになるまでメープルシロップを楽しみます。外で遊んで、つくりたてのメープルシロップを味わって春が来たことを実感する。メープルシロップはカナダの生活の象徴ともいうべきものなんです」

 カナダに欧州からの入植が始まったのは17世紀初頭のこと。先住民はそのはるか昔からサトウカエデの樹液を採取していたという。メープルシロップはミネラルやビタミン、ポリフェノールが豊富な栄養食品としても注目されているが、先住民はこの甘い樹液が栄養に富んでいることも知っていた。その先住民から樹液の採取法を教わった入植者が煮詰めるようになって、メープルシロップが生まれたようだ。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る