第66回 医者要らず?ケニア・カンバ族の食事情
「もともとアフリカの多くの地域では現在のような国の概念がなく、部族ごとに集団で暮らしていました。お金もなく、物々交換だったから、砂糖が欲しかったらその土地に行って、自分がつくった服などと交換する。そうやって文化が行き来していたのだと思います」
それが、15世紀半ばに欧州各国がアフリカに進出。19世紀に入ると競うように植民地化していく。現在のアフリカの国のほとんどは列強によって分割されたものなのだ。「たまたまその土地に移動していたがために国境から出ることができず、とどまってしまった部族もいます。だからケニアには言葉も文化も異なる多数の部族が共存しているんですよ」
そんな複雑な歴史の中でも彼らはそれぞれの文化を大切にしてきた。しかし、外から入ってきた文化も拒絶していたわけではないようだ。
「たとえば、植民地時代に連れてこられたインド人がもたらしたサモサは、ケニアでもポピュラーなスナックです。でも、私たちが食べるサモサはカンバテイスト。いまでは自分たちの料理だと思っています」
そういえば、ムキモに使うジャガイモもコーンもアフリカ大陸の原産ではない。手に入るもの、与えられたものをうまく活用して自分たちの文化を紡いでいったのだ。もちろん、それはケニアに限らず世界中で見られること。ただ、体を内側から元気にしてくれるウソーやムキモには、複雑な歴史を重ねてきたケニア、そしてカンバの人びとのたくましさが宿っている気がした。

Masyuko's Buffalo Cafe(マシューコウズ・バッファローカフェ)
東京都品川区西五反田2-30-10 セブンスターマンション第一 1F
電話:03-6431-8324
中川明紀(なかがわ あき)
講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮
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