第66回 医者要らず?ケニア・カンバ族の食事情
「フードプロセッサーを使ってもいいけれど、適度な食感とねばりを出すには昔ながらの手作業が一番なんです」。ほどよいマッシュポテトになったところでバター、さらに塩茹したコーンを入れて混ぜるフローレンスさん。いったい何をつくっているんだろう。
「ムキモですよ」
マッシュポテトに豆やコーン、葉物野菜を加えたもので、カンバ族が日常的によく食べる料理だとフローレンスさんはいう。いわばカンバ族版ポテトサラダだ。
「葉物はケールの一種であるスクマウィキを一番よく使うんですが、日本では冬にケールがあまり出回らないので今日はほうれん草にしました。これをニンニクと一緒にバター、オリーブオイルで炒めて、塩コショウで味付けします。緑の葉物なら何でもよく、カボチャの葉を使うことも多いですよ」
こうして炒めた葉物をマッシュポテトに混ぜるか添えるかして、ココナッツを振りかければ完成だ。グリーンピースが混ざったマッシュポテトは淡い緑色。そのやさしい甘みに塩気が効いたコーン、ニンニクとほうれん草の滋味深いうま味が重なって食が進む、進む。
ちなみに、ムキモによく使うというスクマウィキ(ケール)をケニアの人々は毎日のように食べるらしい。ケールといえば青汁だが、スクマウィキも栄養価の高い食べ物として知られ、その名にはスワヒリ語で「一週間を乗り切ろう」という意味があるそうだ。ほうれん草も栄養豊富だし、ムキモもまた活力を与えてくれそうな料理だなあ。カンバのポテサラあなどれぬ。
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