第66回 医者要らず?ケニア・カンバ族の食事情
確かにずっしりとして腹持ちもよさそう。風邪を引いた時なんかいいかもしれないな。ウソーの粉はさまざまなメーカーが出しているし、自分たちで雑穀などを粉にしてつくったりもするようだ。さらにそこに加える食材も、フローレンスさんのウソーは基本的な食材がすべて入っているが、家庭によって何かを足したり、抜いたりしてそれぞれの味があるという。
「私は昔、短距離や走高跳など陸上競技をしていたので、むやみに薬を飲むことができませんでした。でも、おばあちゃんがつくってくれたウソーを毎日のように飲んでいたので病気にもならず、いつも元気いっぱいでいられた。おばあちゃんの特製ウソーがパワーの源だったんです」
なんだか心まで温まる。聞けば、この店の料理はフローレンスさんの実家の味そのままだという。来日して25年にわたりケニア大使館に勤めたフローレンスさんは、ケニアの文化を伝える場をつくろうと店を開いた。日本滞在が長く料理がさほど得意ではなかったため、最初はケニアのコーヒーと紅茶が飲めるカフェとして始めたそうだ。
だが、友人や在日のケニアの人たちからケニア料理が食べたいという声が続出した。そこでフローレンスさんは意を決し、帰国して母親に料理を教わり、さらに学校に通って調理師免許も取得したのだ。
「だから店の料理はぜんぶおかあさん直伝の味。メニューも2~3種類から始めて、まだ完璧じゃないけれどだいぶ種類が増えたんですよ」
私の問いに答えながら、フローレンスさんは厨房でマッシャー(イモなどをつぶす器具)を使い、トントントンと勢いよく音を立てて何かをつぶしだした。許可をもらって厨房の中を見せてもらうと、大きなボウルの中にあったのはグリーンピース。ある程度つぶしたところで茹でたジャガイモを入れてさらにつぶしていく。けっこうな力仕事だ。
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