第57回 肉肉しいのに佃煮感覚?台湾の「魯肉飯」

 そもそも台湾料理のルーツは福建省にあるといわれている。17世紀に移住してきた福建省の人間が大陸の食文化をもたらし、さらに同時期に台湾に渡ってきた広東省の客家の料理、日本統治下の和食、戦後の中国各地の料理からさまざまな影響を受けて発展したという。そのためか、少し前にこんなトラブルがあった。

 2011年に発行されたミシュランガイド台湾版に「魯肉飯は中国山東省が発祥」だと記され、台湾側が抗議するにいたったというのである。これは、山東料理を「魯菜」ということに起因するらしい。しかし、もともと魯肉飯は「滷肉飯」が本来の名前。発音が同じことからいつのまにか「魯」が充てられるようになったのだそうだ。

「滷」には煮るという意味がある。魯肉飯は貧しかった台湾の農民が貴重な豚肉を家族が均等に食べられるようにと、細かく刻んで煮込み、ごはんにかけたのが始まりだといわれている。苦しい時代を支えてきた料理だからこそ自負も強いのだろう。台湾人が素材を大切にする理由もわかった気がする。

「台湾の料理」だと胸を張る錢さんの魯肉飯をいただいた。台灣物産館より肉は細かめ。まろやかでやさしい味だった。料理を食べながら、錢さんには料理のこと以外にも台湾の見どころや生まれた町の話を伺った。おもしろい話を肴についつい食が進むが、途中ではたと気づく。魯肉飯、牛肉麺、水餃子って、トリプル炭水化物じゃん!

 でも、ソウルフードが並んだ贅沢な食卓。たまにはこんな食べ方もいいんじゃないかな。今度、台湾の人と食事する時は日本人的食べ方もすすめてみよう。そう思いながら、魯肉飯をかきこんだ。

錢爺の魯肉飯。数十種の調味料を使っていると錢さん。ちなみに、台南では魯肉飯のことを肉燥飯ということもあり、そこで魯肉飯を頼むと角煮丼が出てくるらしい
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■台灣物産館 笹塚本店
東京都渋谷区笹塚2-14-15 ヴェルト笹塚ツインビル1階
03-5304-7801
ホームページ:http://www.taiwan-bussankan.com/
■錢爺
神奈川県横浜市南区真金町2-18
045-252-6211
ホームページ:http://www012.upp.so-net.ne.jp/zeniya/

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮