第79回 サウナ以上に愛すべき存在?!フィンランドの国民食

「昔の家庭には必ずサワー種があり、ライ麦パンにもそれぞれの家庭の味がありました。でもいまは忙しいし、ライ麦パンは店で気軽に買える。サワー種も毎日ケアをしないと長期保存ができないからつくる人はとても少ないと思いますよ」とアキさん。なるほど、と頷きながら「昔」という言葉でふと思った。伝統的だというレイカレイパはなぜ穴が開いているのだろう。

「今のような保存技術がなかった時代、夏にライ麦を収穫すると冬に食べる分までパンをつくりました。その際に真ん中に穴を開けて棒に通し、天井から吊るして乾燥保存したのです」

ライ麦ハウスベーカリーの店頭に飾られていたレイカレイパ。フィンランドの言葉でレイカは穴、レイパはパンを意味する
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 穴はその時の名残だとアキさんはいう。しかし、乾燥したらもっとかたくなるのでは……。そう聞くと、「スープに入れたりしてふやかして食べたんです」と教えてくれた。ちょうど店頭に乾燥させたレイカレイパが飾ってあったので触ってみたが、薄い板なら釘を打てるんじゃないかってくらいかたい。後ろで「私もこんなにかたいのは食べたくないですね」とアキさんは笑っていた。

 ただ、日持ちがするうえ時間をおくほど酸味が強くなるので1~2日置いて酸味を楽しむことは多いそうだ。持ち帰ったレイカレイパを翌日食べてみたが、確かに酸味が強くなっていた。フィンランド大使館のコッコさんは「祖母は手づくりのライ麦パンを食べさせてくれました。幼い頃ですがとても美味しかった記憶があって私は焼き立てが好きなんです」と言っていた。好みは人それぞれだ。

 そのコッコさんがもう一つ、ライ麦粉を使った国民食があると話してくれていた。レイカレイパなどのライ麦パンほど日常的ではないが、クリスマスや誕生日、結婚式のお祝いなど特別な時に欠かせないものだという。

「カレリアンピーラッカ(カルヤランピーラッカ)ですね。ライ麦粉と小麦粉でつくった生地を薄くのばし、ミルク粥を包んで焼いたパイです。カレリアンピーラッカとはカレリア地方のパイという意味。もともとはカレリア地方で食べられていたもので、1000年くらい前には原型のようなものがあったといわれています。今では全国的に愛されていますよ」とアキさん。

 カレリア地方はフィンランド南東部とロシア北西部にまたがる地域だ。これも簡単につくれるものではないそうだが、カレリア地方の出身であるコッコさんの奥様は得意で日本でもつくるという。

カレリアンピーラッカはカレリアンパイとも呼ばれる。このまま食べてもいいが、エッグバター(茹で卵とバターを混ぜたもの)やサーモンなどをのせて食べることも多い。また、ミルク粥ではなくマッシュポテトを包むこともあるそうだ
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