最終回 神奈川いちょう団地でベトナム料理を食べ歩き
フォーなど他にもメニューはあったけれど、やっぱりここは「いつでもどこでもバインミー」でしょう。フランスパンに肉や野菜を挟んで食べるバインミーは、フランスの植民地時代にパン文化が広まって生まれたもの。もともと「バインミー」とはパン全般を指す言葉だそうで、メニューには「バインミ・ティ」と書かれていた。「ティ」は「肉」の意味だ。
びっくりしたのは自家製というパンの軽さ。表面はカリカリなのだが、中は空気を含んでとてもふんわりしている。パンが軽いのはバインミーの特徴らしく、以前ベトナムの屋台で食べたパンもふわふわだった。でも、この店のパンはそれ以上。中の具との相性も絶妙で、あふれんばかりの野菜に肉の旨みが重なり、バターを塗った芳醇なパンが包み込む。ぺろりと平らげた上にテイクアウト用のパンまで購入してしまった。
「バインミーに挟む焼き豚も買えるよ」
店員さんが教えてくれた。中に入っていたチャーシューみたいな肉のことだ。バインミーヴィエは隣の食材店「金福」が経営していて、焼き豚は金福の名物らしい。金福に入ると、小ぢんまりとした店内には数人のお客さん。みんな焼き豚を買いにきたのだという。
厚木から来たというおかあさんは、「いつもお正月用の食材をここに買いにくるのよ。焼き豚とちまきはお正月に欠かせないわ」という。ちまきはバインチュンのことで、「食べるとお金持ちになれるわよ、うふふ。あなたも一つどう?」と勧められた。お金持ちになるためにバインチュンは購入済みだ。
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