最終回 神奈川いちょう団地でベトナム料理を食べ歩き

 寒空の中でボール遊びをする子どもたちを「元気だなあ」と眺めながら歩を進めると、ポツンと佇む店を発見。プレハブの平屋で「THANH HA(タン・ハー)」と書かれた文字が店名らしい。「こんにちは」と引き戸を開けて入ると驚いた。南国の野菜や果物にココナッツの缶詰、チリソースやヌクマム(魚醤)などクセの強そうな調味料、派手なパッケージのお菓子といった異国の商品が三方の壁にびっしり並んだ賑やかな世界が現れたのだ。一気に東南アジアの雑踏に紛れ込んだ感覚である。

タン・ハーにはベトナムだけでなく、タイなど他の東南アジアの国の商品も並ぶ
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 タン・ハーは食材店兼ベトナム料理店で、中央にテーブルが並び、お客さんが食事をとっている。「じゃあ、私もさっそく」と席についてメニューを見ると、数十種の料理が並んでいて迷う。そこで、向かいの席のベトナム人カップルにおすすめを聞いた。

「フォー・ボーがおすすめ。僕も食べたよ」

 フォーは日本でもよく知られたライスヌードルの一種。「ボー」は牛肉だ。何度か食べたことがあるポピュラーなベトナム料理だけれども、注文を取りに来たお店の人もフォー・ボーをすすめるのでいただくことにした。

 あっさりとしながら牛肉の旨みが溶け込んだコクのあるスープ。やわらかな牛肉と一緒にフォーをすすると、ふくよかな味が口の中に広がっていく。パクチーやワケギ、モヤシがシャキシャキで、後味はさっぱり。テーブルに置かれたチリペーストをプラスして、時々辛さにむせながらも一気にほおばる。

「うちのトップ3に入る人気メニュー。ベトナム人はみんな大好きよ」と店の女将さんがいう。かつていちょう団地で暮らしていて、料理が好きだからとお店を始めて約17年。店名の「タン・ハー」は女将さんの名前で、豊富なメニューのレシピはすべて彼女が考案しているそうだ。

タン・ハーのフォー・ボーは牛肉がたっぷり
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