第73回 カロリーなんて気にしない!カナダの名物料理とは
ちょうどそこへ新たなプティーンが運ばれてきた。フライドポテトにサワークリームを乗せ、赤ワインとハチミツのソース、パルミジャーノをかけたもので、店の人が「カナダの人はプティーンじゃないと思うかもしれませんが、うちのオリジナルです」と言ってテーブルに置く。
「そうそう、このようなバリエーションに富んだプティーンが増えているんです。サワークリームを使うなんておもしろいですね」とジュリーさん。さっそくいただくとサワークリームの酸味と赤ワインソースの甘くてコクのある風味がポテトを包み込む。従来のプティーンより上品な味わいで、スイーツ感覚でも楽しめる一品だ。
「新しいバリエーションで一番有名なのはモントリオールのレストラン『オ・ピエ・ド・コション』のフォアグラがのったプティーンです。そのほかに、ロブスターがのったプティーンも人気ですね」
フォアグラにロブスターと一気に豪華な料理になったイメージだが、こうして見直されたことでプティーンの人気はケベックとは反対側の西部に位置するブリティッシュ・コロンビア州にまで至り、全国で愛される料理になったという。
「ただ、カナダは1971年に世界に先駆けて多文化主義政策を導入した国。国土も広く気候もさまざまですから、地域によって料理の特徴も異なります。プティーンをソウルフードだと答えるのはケベックの人たちだけかもしれません」
ジュリーさんはそういうが、ケベックの人たちがプティーンに誇りを持っていたからこそさまざまなバリエーションが生まれ、全国へと広まっていった。さらには海を渡って日本にいる私の目の前にも置かれている。遠い国にいる彼らのプティーン愛に思いを馳せながらかみしめると心がほんわかと温まった。

HyLife Pork TABLE(ハイライフ ポーク テーブル)
東京都渋谷区猿楽町10-1 マンサード代官山2階
電話:03-6452-5497
ホームページ:http://www.hylifepork.com/table/
中川明紀(なかがわ あき)
講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮
「世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅」最新記事
バックナンバー一覧へ- 最終回 神奈川いちょう団地でベトナム料理を食べ歩き
- 第85回 具材は挟んで載せて ベネズエラのアレパ
- 第84回 パキスタンのおふくろの味、アチャリカレー
- 第83回 労働を忘れ心を整えるユダヤ教安息日の食卓
- 第82回 夜通し続くルーマニアの結婚式、招待客の腹を満たす「サルマーレ」を食べてみた
- 第81回 ビールが進む!「種」を使ったソースでつくる、アフリカ・トーゴの国民食とは
- 第80回 キューバの豆料理から見えてきた、社会主義国の食卓事情
- 第79回 サウナ以上に愛すべき存在?!フィンランドの国民食
- 第78回 幸福を招くインドネシアの「黄色いごはん」
- 第77回 アルゼンチンの英雄、メッシが愛する料理「ミラネッサ」とは?