第73回 カロリーなんて気にしない!カナダの名物料理とは
「もちろん夏も食べますよ。でも、冬の寒い時にプティーンを食べると身体がすごく温まるんです。カナダは冬の国技のアイスホッケーをはじめ、スキーやスケートなどウィンタースポーツが盛んですが、スポーツの後に食べるプティーンが最高! スキー場やスケート場には必ず売られています。私も小さい頃にフィギュアスケートをやっていて、上手に滑れると父がご褒美にプティーンを買ってくれたので一生懸命練習したものです(笑)」
確かにボリュームのあるプティーンは腹持ちもいいし、エネルギー源になりそうだ。そういえば、ロバートさんは「お酒を飲んだ後に食べるのがたまらない。日本でいう〆のラーメンです」と言っていた。飲んだ後にこってりしたものを食べたくなるのは世界共通らしい。それにスキー場で食べるラーメンも美味しいなあと思ってジュリーさんに言うと、「そうそう、日本のラーメンみたいなものです」と笑う。
しかし、国民食として受け入れられなかったというのはどういうことか。聞けば聞くほど愛されている気がするのだが……。
「一言でいえば庶民の味だからです。プティーンは洗練された料理とは違うので、一部の上流階級の人たちから認められなかったんですよ」
つまり、そんな栄養が偏ったものを食べてはだめよ、ということか。ジャンクフードの悲しい性ですなあ。その空気はケベック州の中ですら蔓延していたとジュリーさんは振り返る。「90年代の初頭にケベックの州首相が記者に『プティーンを食べるか?』と問われたことがありました。その首相はイエスともノーとも言わず、『もう行かないと』と質問を避けたのです」。
おそらく、「食べる」と言えば上流階級の人々から突かれるし、「食べない」といえば庶民から非難されるので何も言えなかったのだろう。そのプティーンが見直されるようになったのは2000年代に入ってからだ。
「若いシェフを中心にケベックの料理や食材を広めていこうという動きが起こったんです。その一つにプティーンがあって、ポテト、チーズ、ソースだけに留まらないクリエイティブなプティーンが次々に考案されていきました」
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