ハッブル望遠鏡 50の傑作画像 その5
ホウグの天体
へび座にある「ホウグの天体」と呼ばれる銀河は、黄色い中心核のまわりを円形の青い環が取り巻き、その間にはほとんど星がないという、非常にめずらしい形をしている。地球からの距離は6億光年、直径は約12万光年で、銀河系よりやや大きい。黄色い中心核にある星のほとんどが古い星であるのに対して、青い環を形づくる星のほとんどが高温の若い大質量星で、20~30億年前に別の銀河がこの銀河をかすめて通ったときに誕生したと考えられている。NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA). Acknowledgment: Ray A. Lucas (STScI/AURA)
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超新星の爆風
宇宙に浮かぶ繊細なリボンのような不思議な天体は、銀河系内に広がる超新星残骸のガスの一部だ。西暦1006年5月1日頃、超新星爆発の光が地球に届き、アフリカ、欧州、極東の人々によって記録された(日本でも藤原定家が『明月記』にこの「客星」のことを記している)。現在SN 1006と呼ばれているこの超新星は、地球から約7000光年の距離にある白色矮星が一生を終え、大爆発を起こして吹き飛んだものである。SN1006は、おそらく人類が目撃した最も明るい星だった。その明るさは金星をしのぎ、月を除けば夜空の中で最も明るい天体だった。NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA). Acknowledgment: W. Blair (Johns Hopkins University)
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ふとっちょ銀河団の体重
2014年4月、ハッブル宇宙望遠鏡が収集したデータを使って、既知の遠方の銀河団の中で最も重いACT-CL J0102-4915銀河団の質量が推定された。スペイン語で「ふとっちょ」を意味する「エル・ゴルド」という愛称を持つこの銀河団は70億光年の彼方にある。天文学者は、エル・ゴルド銀河団の重力が背景の銀河の画像をどれだけ歪ませているかを測定することにより、この銀河団が太陽の3000兆倍もの質量を持つことを示した。これは、以前の見積もりより43%も重い。地球から比較的近いところでは同じくらい重い銀河団が見つかっているが、これだけ古い銀河団(現在138億歳と見積もられている宇宙が約半分の年齢だった時代の銀河団)でここまで重いものは、ほかに見つかっていない。NASA, ESA, and J. Jee (University of California, Davis)
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タランチュラの心臓
タランチュラ星雲という別名を持つかじき座30星雲の中心部にある星形成領域。数百万個の星々が生まれているこの領域は銀河系の伴銀河である大マゼラン雲にあり、地球からの距離は17万光年だ。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したモザイク画像を詳細に見ていくと、個々の星を特定して、黒い塵の雲に包まれた星の赤ちゃんから、若くして激しい超新星爆発を起こす巨大な星まで、星の一生をたどることができる。NASA, ESA, D. Lennon and E. Sabbi (ESA/STScI), J. Anderson, S. E. de Mink, R. van der Marel, T. Sohn, and N. Walborn (STScI), N. Bastian (Excellence Cluster, Munich), L. Bedin (INAF, Padua), E. Bressert (ESO), P. Crowther (University of Sheffield), A. de Koter (University of Amsterdam), C. Evans (UKATC/STFC, Edinburgh), A. Herrero (IAC, Tenerife), N. Langer (AifA, Bonn), I. Platais (JHU), and H. Sana (University of Amsterdam)
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ナショナル ジオグラフィック2015年4月号では、専門家が厳選した、ハッブル望遠鏡の傑作画像10点を紹介しています。詳しくはこちらからどうぞ。