さて、ブータンの伝統的おやつが、みなチュゴのように人気を失っているわけではない。特にポピュラーなのは、トウモロコシから作る「ゲザシップ」だという。原材料を聞き、ブータンの旅で農家に泊まった際にふるまわれたお茶請けの一つだと思い出した。硬くざっくりとした食感の甘くないコーンフレークのようなスナックだ。
「トウモロコシを蒸すかゆでてからつぶし乾燥させるのですが、機械で作るものと杵でつぶして作るものがあります。杵を使った方が、形が均等でないから食感に変化がでておいしいんです」と渡辺さん。そして、「硬いので揚げると食べやすくなるんですよ」と揚げた手作りゲザシップを出してくれた。
農家で見たものに比べ、形が不揃いでゴツゴツとしている。口にすると、こちらはコーンフレークというより硬い米せんべいのような食感だ。出来合いのものは店で揚げる前の状態で売られ、家で調理するのだという。
チュゴもゲザシップも超自然派で、素材以外の甘みがなかった。「甘くない」というのは、ブータンの伝統的なおやつの特徴なのだ。「お米を炒って作る『ザウ』などはお砂糖で甘みをつける人もいますが、日本人が考えるような味ではない。ブータンの人は甘いのが苦手なんです」と渡辺さんは言う。
農家でザウも食べたが、日本のおこしに似た味。シンプルなザウにエゴマを合わせバターをまぶしたもの(これもザウの一種)は、芳ばしくて、食事前だというのについ「もう一口」と手が伸びてしまった。べったりとした甘さが口に残らないので、あとを引くのだ。また、これを入れて飲んだ「スジャ」というバター茶はおいしいだけでなくボリューム感もある。かつては、ザウはスジャとセットでしばしば朝食がわりにもなったらしい。
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