忘れられないおやつがある。

 ヒマラヤ山脈東部にある小国ブータンを訪れた際に食べた四角くて白い塊だ。一緒に旅をしていた友人は、「わたしこれダメ」と言ってすぐ口から出してしまったというシロモノ。どうしてそれが、いつまでも頭に残るのか。実はこのおやつ、単に「硬い」という言葉から想像できる食べ物をはるかに超えた驚愕の硬さなのだ。

 ブータンは完全な自由旅行はできず、旅する際は必ずガイドが付く国だ。到着するなりガイドさんに食べ物のことばかり聞いていたら、連れて行ってくれたのが町の市場。野菜、肉、穀類などと食材が溢れる中で、「ブータンならではのおやつが見たい」と言うと、ガイドさんは加工肉のコーナーに案内してくれた。肉コーナーでおやつ?と思っていると、彼が「これこれ」と指したのは干し肉などの横にぶら下がる乳白色の塊。大きめのキャラメルのようなもので、数珠のように糸に通されぶら下がっている。

ブータンの加工肉売り場には驚愕のおやつがあった
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「チュゴ」と呼ばれるこの白い塊の正体は干しチーズ。ヤクの乳から作ったカッテージチーズを干したものだ。形からすると、さしずめ“チーズキャラメル”といったところか。

 口にしてみると、ほんの少し牛乳とは違うクセがあり、ごく自然な乳の甘みが広がる。4000メートルほどもの高地でヤクを放牧するというブータンの遊牧民の食をじんわり味わっている感覚で、素直に「おいしい」と思ったが、驚いたのがその硬さ。手にすると石のようにカチカチだったので、「舐めているうちに溶けてくるのかな」と思いきや、一向にその気配がない。結局、1時間以上も口の中で転がしていた。友人が手を上げたのは、前代未聞のこの食感だったのだ。でも、最初の衝撃から立ち直ると、この「口の中から消えない」感覚がやみつきに。ずっと舐めているとなんだかほっこり落ち着いた気分になる。

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