【番外編】フィンランドの森の宝石 クラウドベリーのデザート

 生のクラウドベリーを食べてみたいと日本で探していると、ロシア産の冷凍品が見つかった。冷凍商品じゃ実はつぶれているかも、と取り寄せた袋を開けてみるとしっかり小さな丸い実が重なり合ったクラウドベリーがのぞいた。うれしくなって早速解凍して食べると、軟らかい実の中にプチプチとした硬めの種の食感が現れる。

ロシア産冷凍クラウドベリー。中にはしっかりつぶつぶとした実が。
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「クラウドベリーは乳製品との相性がとてもいいと思います」と言うのは、学生時代にフィンランドに5年間滞在していた大使館広報部の堀内都喜子さん。2年前、かつてのホストファミリーを訪れた際には、思わずテンションが上がったそう。生のクラウドベリーがたっぷり載ったレアチーズケーキでもてなしてくれたからだ。彼女が滞在していたのは中南部フィンランドだが、家の人は森の中の湿地を走っていたときこれを見付けたといい、「他人に取られたらイヤだから具体的な場所は秘密!」と言われたとか。日本ならば、さしずめ松茸のありかのようなものだろう。

 話に触発されて、近くの店で買ったレアチーズケーキに少し砂糖をかけておいたロシア産クラウドベリーをトッピングして食べてみた。堀内さんが現地で食べたものとは比べるべくもないが、まったりと濃いクリーミーなチーズにプチプチとした食感、果物の酸味と甘みが加わって、なんということもないケーキが高級な味に変身。でも――かの国で食べたあっさり味のレイパユーストの方が、この果物ならではの味わいを引き出してくれそうな気もする。

 7月のフィンランドといえば白夜の季節。太陽が完全に沈むことのない空の下、湿地の水辺ではクラウドベリーが息づく。おとぎ話のような光景だけど、そこに飛び回る蚊を想像すると、にじみでてくるのはユーモラスな人間くささ。キュッキュッと口の中で鳴るレイパユーストは、そんな人間味をクラウドベリーのお菓子に与えてくれるのかもしれない。

乳製品と相性がいいというクラウドベリーを使ったお菓子。Kim Ekman for Visit Finland
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メレンダ千春

海外に行けば、どこを見ずとも行くのはスーパーのおやつ売り場という、激甘から激辛まで味の守備範囲は360度のライター。最初の異国のお菓子との出会いは、アメリカに住む遠い親戚のおじさんが日本を訪れる度にお土産にくれた、キラキラ光る水色の紙でキャンディーのように包装されたチョコレート。ミルクの味が濃くて、おいしかったな~。インパクトのあるおやつを求めて、日々邁進中。