【番外編】フィンランドの森の宝石 クラウドベリーのデザート

「私の出身地の村は8割が『沼』なんです」

 クラウドベリーが自生するフィンランド中部、オウル湖周辺地域出身の大使館商務部インカ=リーサ・ハカラさんに話を聞いた。のっけにそんな言葉がさらりと彼女の口から出て、失礼ながら思わず、どろっと濁った水辺に囲まれた、とても住みにくそうな場所が思い浮かんだ。その表情を察知したのか、同じ商務部の木村正裕さんがすかさず口を開く。「フィンランドの沼は、日本の沼のイメージとは全く違います。あえて言えば、尾瀬の湿原に近いかな。日本人なら湖と呼ぶような場所もあるんですよ」。どろどろとした沼地が一気に、透明度の高い水をたたえた広大な湿原に、ミズバショウの白い花が咲き誇る尾瀬の風景に切り替わる。現金だが、俄然、クラウドベリーの魅力も増してきた。

 このベリーが生えているのは水辺。地面が軟らかい場所なので、摘みに行くには長靴が必需品だ。そのほかにも蚊除けとして帽子や頭から被れる防虫ネットなどが欠かせない。手足もむき出しにしていれば、あっと言う間に何匹もの蚊に食われてしまう。「ベリー類はよく摘みに行きましたが、クラウドベリーが採れる沼地は危ないので子どもだけで行くことはありませんでした。地面に足を取られて動けなくなることもありますから」とインカさん。家には、おじさんがクラウドベリーをよく摘んできてくれたという。

 果物の実は軟らかく、つぶれないよう手摘みが必須。「普通のベリーだったら、スコップのようなベリー摘みの道具でざっくざっくと採っても大丈夫。“本気”の大人は、10リットルのバスケットを2つ、3つ持ってベリー採りに行きます。でも、クラウドベリーはそうはいきません」(インカさん)。栽培している場所もあるようだが、他のベリー類に比べクラウドベリーは自生する地域が限られ、摘むのに手間がかかる。野生ベリーが豊富なフィンランドでも、特別な存在だ。当然、値段も一段と高い。

フィンランドのベリー摘みは、例えばこんな風に森の中に入っていく。写真は首都ヘルシンキ近郊の国立公園の中。 もっとも田舎などでは庭先の森でも採れたりするとか。
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ざっくざっくと一気にベリーが採れるフィンランドのベリー採り用スコップ。写真はインカさんの実家で愛用しているもの。
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