第108回 金箔レッドのオトシブミが揺りかごをつくるまで

オトシブミの一種(甲虫目:ゾウムシ上科:オトシブミ科)
An attelabid leaf-rolling weevil, Euscelus sp.
エウセルス(Euscels)属の一種。前翅に金箔がはめ込まれているみたいだ。これはオス。
体長:約5 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 オトシブミは日本にもいて、ご存じの方も多いことだろう。メスが卵を産むときに、植物の葉っぱを折りたたみ、くるくると巻いて、幼虫が育つ「揺りかご」をつくる昆虫だ。

 今年の4月から10月末まで、オトシブミの揺りかごづくりを研究されている成城大学の櫻井一彦先生がコスタリカへ調査に来られていた。ここモンテベルデにもよくいらしていて、先生とは長年の付き合いになる。

 そこで今回は、モンテベルデで見つけた上の写真のオトシブミ(おそらく新種)との衝撃的な再会と、このオトシブミの揺りかごづくりを撮影した動画を紹介しよう。動画は櫻井先生からお借りした貴重な研究成果の一部だ。

 今から約1年前の2014年11月半ば、家の前の林道を歩いていると、1枚の葉の上にキラキラした小さなオトシブミがいるのを見つけた。朱色の体に金箔を張り付けたようなその美しい色に圧倒されたぼくは、さっそくそのオトシブミの写真を撮ることにした。

 ところが撮り始めてまもなく、鮮やかな紅色がカメラの液晶画面に広がったかと思うと、そのオトシブミは、あっという間に空高く飛んでいった。

 体の朱色よりも深く鮮やかなその紅色の正体は、オトシブミの後翅だった! 後翅があんなに鮮やかなのにはビックリで、すごく印象に残った。

 あの体の朱色と後翅の紅色には何かの役割があるはず。赤く色づく葉に関係している可能性が高いと予想し、似たような色の葉がないか探していると、それはすぐに見つかった。

 ケルクス・インシグニス(Quercus insignis)というコナラの一種で、これ以外に考えられないようなそっくりな朱色と紅色の若葉をもっていたのである。それからは、このコナラの葉をことあるごとに観察するようになった。

ケルクス・インシグニス(コナラの一種)の若葉。赤いのは、「紅葉」をしているのではない。光合成を始めるまで、赤い色素によって薄くて柔らかい葉を強い紫外線から保護している。
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 そうして3カ月が過ぎた2015年2月のこと。コナラの赤い若葉が一斉に芽吹き始めた。そしてそこにいたのである! あのオトシブミが!

 ぼくの呼吸は止まり、とてつもない元気が湧き上がってきた。また会えてよかった~♪ 思い続けていたことが現実になるって、うん、本当になんとも言えないエネルギーのようなものが胸の奥からこみ上げてくるものである。

オトシブミとの再会。あのコナラの赤い若葉の下にいた。金箔模様がまぶしい。これはメス。
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 観察していると、葉の上をゆっくり歩いたり、葉をかじって食事をしたり。

 お!同じオトシブミをもう一匹見つけた!と思いきや、こんどはこのコナラの苞葉(ほうよう:新芽を包む葉のようなもの)のかけらだった。

若葉の上に落ちていたケルクス・インシグニス(コナラの一種)の苞葉。最初は上のオトシブミと見間違えた。
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 メタリックな光沢といい、赤い色といい、苞葉がこのオトシブミに擬態しているのか?と思えるほどだった。実際はその逆なのだが(笑)。

 オトシブミ分類学者のロバート・ハミルトン博士によると、今回のオトシブミ、よく似た種がいるがおそらく新種だろうとのこと。次のページでは、櫻井先生からお借りし、編集したこのオトシブミの揺りかごづくりの動画をぜひご覧ください!

次のページは<オトシブミの揺りかごづくりの動画>です。

ケルクス・インシグニス(ブナ科:コナラ属)の若葉
Young leaves of an oak tree, Quercus insignis
日本の秋の紅葉を思わせるかのような彩り。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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オトシブミの一種(甲虫目:ゾウムシ上科:オトシブミ科)
An attelabid leaf-rolling weevil, Euscelus sp.
メスを横から見たところ。腹部に、円形の白い粉(ワックス)のようなものが付いている(矢印)。オスにはない。揺りかごをつくる際、葉をしっかりつかむための「滑り止め」の役割を担っているのかもしれない。
体長:約5 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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つくった揺りかご
A cradle roll made by the Euscelus attelabid weevil.
もう一種のケルクス・コルテシイというコナラの葉を折りたたみ、巻いてつくり、切り落としたもの。
長さ:約7 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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