第149回 謎のトゲトゲ幼虫が成虫に、実は新種だった
屋根の上からピソちゃんに威嚇された
夜中、この原稿を書いている今も、頭上の屋根の上でゴソゴソしているハナジロハナグマのピソちゃん。屋根の上に住みついたピソちゃんがいることを第130回で紹介したが、その後、屋根に上がるハシゴが外されていた時期があったので、しばらく留守にしていたようだ。でも、ぼくがまたハシゴをかけると、スグに「住民」が戻ってきた(笑)。
11月のある朝のことだ。八百屋で購入した食材のナス(なすび)にガの幼虫が入っていた。幼虫を記録するため、玄関前でなすびを持って撮影していると、グフォッフォッフォッフォッフォッ・・・と、頭の上の方からうなり声が聞こえてきた。屋根の上にはピソちゃん。こちらを向いて、威嚇している。
なぜ? これまで威嚇されたことがなかったのに・・・ もしかしたら、なすびを威嚇しているのだろうか? そんなことを思いながら、カメラをピソちゃんに向けて、その様子を動画に収めた。
この時期、オスたちがあちこち歩き回っていて、オス同士が頻繁に出会う。オス同士が出会うとお互い威嚇しあったり、追いかけあったり、ケンカに発展することもしばしば。
なすびを持つぼくが、オスのピソちゃんに見えたのだろうか?
ちなみに、なすびは米ナスで30センチ近い大きさだった。

西田賢司(にしだ けんじ)
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html