第149回 謎のトゲトゲ幼虫が成虫に、実は新種だった
11月、コスタリカのモンテベルデは風が強くなってきた。晴れるとスグに乾燥が進み、雨が流されてくるとまたしっとり、を繰り返す。雨季から乾季へ向かうこの時期特有の天候に合わせて、多くの昆虫たちが渡りや移動など、乾季に向けた準備を始めたようだ。ハナジロハナグマのピソちゃんたちも、繁殖期前なのか、活発に動き回っている(次のページで紹介します)。
さて、前回見つけた謎のツノゼミのトゲトゲ幼虫はその後どうなったのか。スミソニアン自然史博物館のマケイミー博士から依頼され、3年越しの捜索でようやく探し出し、飼育をしていた。成虫になり、ハイフィノエ・ラティフロンズというツノゼミだとわかれば、博士の期待通りということなのだが。
飼育を始めて3週間、幼虫は無事羽化した。しかし、成虫になったそのツノゼミは、ハイフィノエ属ではなく、アスポナ属だった(上の写真)。ぼくたちが幼虫を捕まえたとき、近くでこの成虫を見つけていたので、もしかしたらという予感はあった。
期待とは違っていたが、それでもマケイミー博士は大喜び。アスポナ属の幼虫は、これまでに知られていなかったからだ。しかも博士が詳しく調べた結果、この種が新種とわかったのだ。ぼくは、このツノゼミにこれまで2回ほど出会っていて、てっきり既に記載され名前が付いているアスポナ・インテルメディア(Aspona intermedia)という種だと思っていた。
「ケンジが撮影したアスポナ属の幼虫の写真がスミソニアン博物館のニュースに載ったよ」と、博士がリンク先を貼り付けたメールを送ってくれた(リンク先はこちら)。スミソニアンのサイトにあるその写真のキャプションを見ると、「トゲに覆われたアスポナ属の1種。マケイミー博士は現在、この種の記述と命名に取り組んでいます」とあった。どんな名前が付くのだろう?
今回の調査で初めて明らかになったアスポナ属の幼虫、そして新種の生態を一部解明できたことは、小さなツノゼミの世界の大きな躍進となっただろう。ぼくもその役に立てて、うれしく思う。