第106回 「森の宝石」モルフォチョウがやって来た!

ヘレノールモルフォ(鱗翅目:タテハチョウ科:ジャノメチョウ亜科:モルフォチョウ族)
A blue morpho butterfly, Morpho helenor narcissus
モルフォチョウの仲間は3属42種が中南米で確認されていて、そのうちの9種がコスタリカに生息している。
前翅長:約70 mm 撮影地:シキレス、コスタリカ
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 コスタリカは今年、エルニーニョ現象の影響で天候不順が続いている。カリブ海(大西洋)側は雨が多く、太平洋側は乾燥が激しい。ここモンテベルデの太平洋側も、雨季の終盤で例年なら雨が一番よく降る時期なのだが、今年は雨が少ない。

 そのせいか、森を歩くと季節外れの昆虫たちに出会う。テントウムシダマシが集まった塊(第21回)や、コウモリのように集団で「寝床」につくチョウ(第24回)など、どちらも乾季に目にするものだ。不思議さを感じられずにはいられない。

 最近になってやっと雨らしい雨が降り始め、「森の宝石」モルフォチョウがたくさん家の周りを舞い始めた。3年続けての登場だ。家の前をスーッ、ヒラヒラ、ホワッホワッホワッと青い輝きを放ちながら、優雅かつ予想不可能な複雑な動きで飛んでいく。

地上付近を飛ぶモルフォチョウ。どうやら家の前は、飛行経路(蝶の道)になっているようだ。
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 このモルフォチョウは、ヘレノールモルフォ(Morpho helenor)と呼ばれる、コスタリカで一番よく目にする種。テレビなどで取り上げられたり、研究対象にされたりすることも多い。

 ただしこのチョウは、常に青く輝いて見えるわけではない。青いのは翅の表側で、それが見えるのは翅を広げたときだけ。葉や地面などにとまると、たいてい翅は閉じられている。なので輝く青は見えないのである。翅の裏側はというと、目玉模様(眼状紋)が付いた枯れ葉のような色合いをしていて表に比べると地味だ。

 先日も、玄関を開けて数歩足を進ませると、遠くの倒木の上に青く輝くものが見えた。翅を広げてとまっているモルフォチョウだ。撮影せねば!

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交尾中のヘレノールモルフォ。
A mating pair of blue morpho, Morpho helenor narcissus
上がメスで下がオス。翅の裏側は茶色っぽく、複数の眼状紋が目立つ。コスタリカの蝶園(バタフライガーデン)で撮影した。
前翅長:約70 mm 撮影地:アラフエラ、コスタリカ
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真後ろから撮影してみた。翅の縁が波打っているのがわかる。2枚貝のシャコガイかホタテガイのようだ。
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モルフォブルーとも呼ばれる青いメタリック色は、色素によるものではなく、鱗粉の構造によるものだ。構造色と呼ばれ、極小の襞(ひだ)のような構造が、青い光の波だけを跳ね返し、重ね合わせ、青を強めるという現象(干渉)によって色が見えるのである。
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