第130回 ピソちゃんが屋根の上で暮らし始めた

ハナジロハナグマ(哺乳綱:ネコ目:アライグマ科:ハナグマ属)
ハナジロハナグマ(哺乳綱:ネコ目:アライグマ科:ハナグマ属)
A male white-nosed coati, Nasua narica
小雨が舞い始めた午前9時半ごろ、屋根の上の軒下の寝床で雨宿りをしているオスのピソちゃん(ハナジロハナグマ)。
体長:約50 cm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 翌朝、雨が降り始めてしばらくしたころ、また頭上から物音が聞こえてきた。ピソちゃんが戻ってきたのかもしれない。

 ぼくはピソちゃんの寝床が見える土手から様子を伺ってみることにした。土手を登り、倒木の上を歩いてピソちゃんの寝床に目を向けると、いた!(上の写真) 

家の屋根とラボの屋根。矢印の場所がピソちゃんの寝床。家の横の高くなった場所から撮影。
家の屋根とラボの屋根。矢印の場所がピソちゃんの寝床。家の横の高くなった場所から撮影。
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 雨宿りをしたり、寝床にしたり、このピソちゃんはどうやらこの屋根を自分の「住まい」にしているようだ。

雨脚が強くなってきた。屋根の上の軒下でまっすぐペタ~ンとなったオスのピソちゃん(ハナジロハナグマ)。
雨脚が強くなってきた。屋根の上の軒下でまっすぐペタ~ンとなったオスのピソちゃん(ハナジロハナグマ)。
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 その日の夜7時ごろ、今度はキュキュキュキュッ!!と喧嘩をしているような物凄い鳴き声とドタバタ音が頭上から聞こえてきた。いったい何が起こったのか? 外へ出て屋根を見上げると、ハシゴ辺りでウロウロとする少し小さくて、痩せた1匹のオスのピソちゃんがいた。慌てている様子だ。

ヘッドランプとカメラのフラッシュに照らし出された痩せ型のオスのピソちゃん。ハシゴの場所の屋根の上で「どうしようか?」と慌てている様子。
ヘッドランプとカメラのフラッシュに照らし出された痩せ型のオスのピソちゃん。ハシゴの場所の屋根の上で「どうしようか?」と慌てている様子。
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 この様子だと、あまり近づくと引っかかれたりされるかもしれないので、土手から屋根の上の様子を見ることにした。

 屋根の上の「ねぐら」には、予想通り、住人であるぽっちゃりとしたピソちゃんがいた。もう1匹の痩せたピソちゃんは、仲間のニオイでも嗅ぎつけたのか、そこへとやって来て、寝床の取り合いになったのかもしれない。

 痩せたピソちゃんは、その後すぐに屋根の上から森の土手の茂みの中へジャンプして、暗闇の中へと消えて行った。

 翌日、仕掛けていた定点センサーカメラの動画データを確認してみると、ピソちゃんがハシゴを登っているではないか!! これには、思わず笑ってしまった(次の動画)。

ハシゴを登るピソちゃん(15秒)
午後7時前(6:55PM)、小雨が降りしきる中ハシゴを登っていく痩せ型ピソちゃん。この光景に思わず笑ってしまった。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ

 今度はハシゴに定点センサーカメラを設置してみよう! オモシロ映像が撮れたら「今週のピソちゃん」のコーナーで紹介できたらと思う。

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西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html