第129回 「金平糖」ツノゼミの甘い露

アンティアンセ・エクスパンサ(カメムシ目:ツノゼミ科:Smilinae亜科)
Treehoppers, Antianthe expansa
オスがメスのツノの両側に乗って求愛中。オスたちが愛の歌を奏でているであろうシーン。正面から撮影。
体長:約5~7 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 今回は、雨季が終わりに近づく9月、10月にモンテベルデで一番多く目にするツノゼミを紹介しよう。

 日本からコスタリカのモンテベルデに戻ってきた。「腹が減っていても、減っていなくても戦はできぬ」なので、まずは食材の買出し! 町へ向かうと、砂利の道路が比較的乾いている。例年なら雨の多い時期だが、今年はなんとなく雨が少ない気がする。

 5分ほどで、いつもの小さな食料品店に到着。周りに庭のような場所があるのだが、そこに植えられた数種のナス科の木に目をやると、アンティアンセ・エクスパンサという金平糖のようなかたちをしたツノゼミの群れが枝のあちこちにいた。これは予想通り。ここモンテベルデでは雨季の終盤に多く見られる種だ。

写真中央にアンティアンセ・エクスパンサの若い成虫の群れ。これまでに、幾種かのナス科の植物で群れているのを確認している。
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 このツノゼミの特徴は、横から見るとツノが葉っぱのように高く盛り上がっていることと、眼の横から斜め前へツノが伸びていること。色は緑だが、よく見ると縁取りや斑点がある。

 ナス科の木の枝に群れているのは、若い成虫(成虫になってからあまり日数がたっていない)か幼虫が多い。幼虫は、見た目が成虫と大きくちがっていて黒っぽくトゲトゲしている。なかでも小さな幼虫は、少し黄色の模様が混じっているが、大きくなるにつれ茶色っぽくなっていく。どちらにせよ、日陰にいる群れは黒っぽい塊にしか見えない。

若い幼虫。脱皮したての個体は黄色っぽい(写真では白っぽく写っている)。幼虫たちは葉脈の下や花柄、茎や枝に群れている。たいてい日陰にいるが、撮影のために日向に枝を動かして撮った。体長は2~3 mm。
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成長して大きい幼虫は茶色っぽい。異なる齢の幼虫たちが混ざって一緒に生活していることが多い。大きな幼虫は体長が6 mmほどある。
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 そんな群れの中に、アリが交じっていることもよくある。第127回で紹介したツノゼミ、ヘテロノトゥス・トゥリノドススのようにアリとの「共生関係」がこのアンティアンセ・エクスパンサでも見られるのだ。これまでに、大小さまざまなアリたちがたくさん訪れているのを見てきた。アリたちはツノゼミの群れにやって来て、幼虫のお尻の先から排泄される甘露(糖液)を「収穫」していく。

成虫と幼虫とアリの群れ。写真右下の方の枝の黒い点々はアリ。写真左に著者の親指。
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 黒い塊が「単なるアリの群れ」に見えてしまうほど、アリたちがウジャウジャ群がっていることもある。幼虫たちは群がるアリたちの中に上手く溶け込んでいるのかも知れない。

 さて、アリたちは幼虫たちの間を比較的ゆっくりと動き、管のようになった幼虫たちのお尻の先を触角で刺激して甘露を出してもらったり、アゴと口ひげを使って甘露を飲んだりしている。また幼虫たちは、甘露を排泄する際に「ここに甘露があるよ!早く収穫しに来て!」とアリたちに言わんばかりに、お尻の先を高く持ち上げるのだ。

管のようになったお尻の先から甘露を排泄すると、その部分を高く持ち上げ、アリたちに「アピール?」する。
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 そして、アリがお尻の甘露を収穫し終わると、幼虫はお尻の先を定位置まで下げるのである。

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持ち上げたお尻の先にやってきたアリたち。
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収穫した甘露を飲んでいる2匹のアリ。甘露がアリに収穫されると、幼虫はお尻の先を定位置まで下げる。
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