第159回 カユイのは好物のせい? アメリカヤマアラシ(後編)
アメリカヤマアラシは、アジアやアフリカにいる地上生活のヤマアラシとちがって、南北アメリカ大陸で樹上に暮らしている。そのアメリカヤマアラシの一種であるメキシコキノボリヤマアラシが1匹、モンテベルデの自宅隣の庭に住み着いているのを見つけた(前編を参照)。
寝床にしている木も見つけたので、ぼくは毎日そこを訪れて観察していた。
ある日の夕方、いつもと違う様子のヤマアラシに出会った。小雨が降る中、グアバの木の根元あたりで置物のようにじっとしている。なぜ動かないのか? 動けないのか?
様子がヘンなので、そっと近づいてみると、ヤマアラシは、毛と針をサッと逆立てた。さらに近づくと、体を「トゥルルルルッ!トゥルルルルッ!」と震わせた。威圧感のある、低い音の振動がこちらに伝わってくる。ぼくを威嚇しているのだろう。
近づいてくれるなということだから、離れて様子を見ることにした。そしてしばらくすると、お尻からポロポロと落下物が! なるほど~、ウンチだったのか(冒頭の写真)。
ツブツブウンチがポトポト。止まったかと思うと、またポトポト。おしっこをしたかと思うと、またポトポト・・・。
「まだ出るんかいな!?」
ウンチとオシッコの時間は2~3分だっただろうか。意外と長くかかるもんだ。用を足すと、木の幹を登り、子どもが駄々をこねて「ヤダヤダ~」をするような動きで、雨に濡れた体から水しぶきを飛ばしていた。
出て来たばかりのほやほやウンチを見に行ってみると、長さは2センチほど、シカやナマケモノの糞より細長く、しっとりしていた。ニオイは、草食動物系のさわやかな香り。糞にはツヤホソバエやイエバエなどいろんなハエがたくさんやって来ていた。
よく見ると、古いウンチもたまっている。ヤマアラシはここをトイレとして、しばらく使っているのだろう。わざわざ地上付近まで降りてきてウンチをするのは、ナマケモノの行動(第115回参照)にも似ていてオモシロイ! 後日、別の木々の根元にも糞をしていることが判明。糞虫のコガネムシやタマヤスデやワラジムシ、菌類も確認できた。