第126回 ワニおじさんの衝撃パフォーマンス

アメリカワニ(ワニ目:クロコダイル科:クロコダイル亜科)
The American crocodile, Crocodylus acutus
体長:約3 m 撮影場所:シエルペ川、コスタリカ
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 コスタリカの太平洋側の低地にあるタルコレス川は、野鳥やアメリカワニが見られる名所になっている。そんな生きものたちを見学できるボートツアーが人気で、今から5年前、2011年9月に参加したことがある。

 ぼくたちを乗せたボートは、川をさかのぼって行く。あちこちに出没する水辺の鳥たちを観察していると、あるときボートが砂地になった岸に近づいていき、案内人のおじさんがなぜか岸へ飛び降りた。右手に鶏肉を持ち、下流の方を眺めている・・・何をやっているのか?

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 おじさんの視線の先を見ると・・・何かがこちらに向かってくる。

 ワニだ! 大きい。

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 ワニは岸に近づくと、ダダタダダ!とおじさんが持つ鶏肉めがけて突進!

 おじさんはひらりとかわすようにしながら、全身を現したワニに、巧みに鶏肉を与えている。これがこのツアーの名物「ワニおじさんの餌やりパフォーマンス」なのだ。

 おじさん、そんなことをやっていて大丈夫なのか?

 次々とワニがやって来て、おじさんを囲んでいく。おじさんは、なんとか笑顔をキープしながら餌を与えていく。スゴいパフォーマンスだ! 餌やりが終わると、ワニのしっぽをつかんで持ち上げ、ニコリ。

「野生のワニ相手にようやるわ!」真剣ながら笑顔のおじさんだった。

ワニに囲まれていく「餌やりパフォーマー」のおじさん。
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 アメリカワニは、コスタリカに生息する2種のワニのうちの1種。クロコダイル科に分類されていて、北米南部から南米北部まで生息している(南米のアマゾンには生息していないようだ)。川や海の河口付近、沼地などにいて、魚やカニ、小型の哺乳類や鳥などを捕食する。水に1時間以上も潜っていられるそうで、泳ぎも上手だ。

 前回紹介したメガネカイマンより大きく、体長が7メートル近く、体重が1トン近くになるものがいる。でもコスタリカで見かけられるほとんどのものは3メートルほど。口の先のほう、鼻先辺りが細長く伸びているのが特徴のひとつで、そこを比較すると前回紹介したメガネカイマンと区別がつく。

こちらは、3メートルほどもある大きなメガネカイマン。 低地の熱帯雨林の川岸にいた。両目の間に少し盛り上がった部分があって、眼鏡をかけているように見えるのが名前の由来だ。ボートから岸に近づいて撮影。
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 最近、この「ワニに餌を直接与えるというパフォーマンス」について再び耳にする機会があった。あの餌やりおじさんが、ワニにガブリとかまれたというのだ。

 さいわい、おじさんは無事だったそうだが、このことがきっかけで「ワニの餌やり」がコスタリカ政府の環境エネルギー通信省(MINAET)により禁止されることになった。

 観光客にとったら興奮させられるパフォーマンスで楽しむことができたが、よく考えてみると、それはコスタリカの大自然の光景ではなく、ワニにとってもありがた迷惑だったと思う。

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岸の上で鶏肉を食べたあと、観光客が乗っているボートの目の前で水中へと向かうアメリカワニ。
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アメリカワニ(ワニ目:クロコダイル科:クロコダイル亜科)
The American crocodile, Crocodylus acutus
手足を含め、アゴの先からシッポの先までパワフルなアメリカワニ。てなづけることはできない。海の河口付近から川を行き来する獰猛なサメも、水中にいるアメリカワニを避けて通るそうだ。
体長:約3 m 撮影地:タルコレス、コスタリカ
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