第125回 熱帯雨林の暗闇に浮かびあがったワニ

メガネカイマン(ワニ目:アリゲーター科:カイマン亜科)
Spectacled caiman, Caiman crocodilus
メガネカイマンの頭部の望遠のアップ。下アゴの白い2本の前歯が、上アゴに開いた穴から飛び出している。
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 お盆は過ぎたものの、日本の各地ではまだまだ暑い日が続きそうだ。今回は、ぼく自身が涼しい思いをしたエピソードをご紹介しよう。

 2015年の11月、ナナフシの調査でコスタリカ南部、オサ半島の熱帯雨林へ出かけたときのこと。ナナフシの多くは夜行性なので、夜の8時半、われわれナナフシ調査チーム4人は探索に出かけることにした。

 真っ暗闇の中、ヘッドランプを頼りに小川沿いの細い林道を行く。霧雨が降ったり止んだり、森全体がムッとした空気に包まれ、湿度は100%に近い。視界がかすんで見える。道沿いの茂みからはコオロギやキリギリス、カエルの仲間たちが鳴いている。

 歩き始めてスグに出会ったのが、カエルをくわえた毒ヘビ。テルシオペロ(チュウオウアメリカハブ)というヘビで猛毒をもつ。咬まれると命に関わるので、気をつけて写真を撮ってみた。

猛毒を持つテルシオペロ(Bothrops asper)(クサリヘビ科)がカエルを捕獲したところ。
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 慎重に歩を進めると、今度はサソリが目の前に! 大きなキリギリスの仲間をムシャムシャ食べていた。

枯れた茎の上で、サソリの1種(Centruroides cf. limbatus)(キョクトウサソリ科)が、大きなキリギリスの1種を捕食しているところ。
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 肝心のナナフシが見つからないので、ぼくたちはいったん出発地点へ引き返し、それぞれ違った場所で探すことにした。

オレンジマイコドリのメスが枝の上で雨宿りをするように頭を隠して寝ていた。フラッシュを焚いて撮影しても起きることはなかったが、おじゃましてしまいました。
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 ぼくは、少し広い道を行くことにしたのだが、しばらくすると道の横に大きな池が現れた。真っ暗な池を見渡すと、遠くにキラリ、ヘッドランプの明かりを反射して何かの目が光っている。霧雨が舞って、視界が良くない。フラッシュを使って撮影し、その「目」を確認してみた。それは、メガネカイマンだった。中米から南米の広い範囲に分布しているアリゲーター科に分類されるワニの1種だ。

池の遠くのほうにいるメガネカイマン。カメラのフラッシュで浮かび上がる霧雨と1点の目(写真中央)。
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 今日はいろんな捕食生物に出会うものだと思いながらも、ナナフシ探しを再開。池の岸に生えている1本のマメ科の木にカイガラムシの仲間を見つけた。さらにその木の幹が動いていると思ったら、小さなアリたちがウジャウジャ。そんなこんなでこの木にいる昆虫たちの撮影にいそしんで、15分ほど過ぎたころだろうか・・・、突然足元に、こちらを見つめる何かが!

 ヌゥォオオ~!!

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たぶん Monophlebidaeというカイガラムシの仲間で、ガはツトガの1種。ガはカイガラムシが出す甘い汁を吸いに来ていたのかもしれない。
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アステカアリの1種(Azteca velox)が幹の表面をウジャウジャ走り回っていた。左半分の茶色い部分は、巣の一部。
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