コスタリカに、一風変わった昆虫がいる。飛ばないハンミョウだ。
甲虫の仲間であるハンミョウは大きさが10~20 mmほど、世界各地に2000種以上が生息している。日本でも22種が確認されており、人が歩く先へ先へと少しずつ飛ぶことから「道教え」の異名をもつ。ぼくも幼いころ、山手の開けた道でよくハンミョウに導かれた。
ところが、ここコスタリカのモンテベルデにいるハンミョウ、Pseudoxycheila tarsalis(スードクシケイラ・タルサリス、以下タルサリス)は、飛ばない。これまで何十個体と出会ってきたが、飛んでいるところを見たことがないのだ。
真上から見たところ。紺色の体に前翅の白っぽい二つの斑点が特徴。斑点の部分は、翅が半透明で光が透ける。紺色は構造色。生息地は、コスタリカからパナマにかけての山岳地帯の中腹、標高600~2000 m。
体長:15 mm 撮影地:コスタリカのモンテベルデ、標高1500 m
文献にも「基本飛ばない」とあるし、コスタリカの甲虫を研究しているアンヘル・ソリスさんに尋ねてみても、「飛ぶところを見たことがないよ。空中に放り投げても飛ばない!」と言う。これはどういうことなのか?
タルサリスは、紺色の体に白っぽい斑点が二つあるハンミョウだ。よく見かけるのは雨期の中盤に当たる6月から7月。メスが数匹、むき出しになった粘土層の土壌をウロウロしては、止まって何かをしている。産卵だ。
周辺には直径3ミリほどの穴がたくさん開いている。これらは若い幼虫の巣で、穴に近づいたり、入ってきたりする獲物を食べて成長する。
さて、タルサリスは飛ぶための体をもっているのか? 採集し、体の構造を調べてみることにした。
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