第154回 ハチドリ、小さなヒナの大きな巣立ち
か~ゆいの~よ~♪
あまりのかゆさに、もう歌うしかない。乾燥する日が続き、ダニの仲間で目に見えないほどの大きさのツツガムシが増えている。手首、足首から股間まで、あちこちがかゆい。対策として、毎日洗うわけではない服や靴は、冷凍庫に入れて対処している(笑)。
4月は乾季から雨季への変わり目。雨季がそこまでやってきたか!と感じる日もあるのだが(次の動画)、そんな日はわずかで、風の強い12月に逆戻りしたような天候がほとんど。森の中を歩いてみても、サクッサクッ!と落ち葉の乾いた音がして、乾季にしか見られないテントウムシダマシ(第21回)やジャノメチョウ(24回)が確認できる。
乾季と雨季のおしあいへしあい(20秒)
2018年4月6日の夕暮れ時、太平洋上に入道雲が発生して、雷雨がこちらへ迫って来そうな様子。イナズマが走る。ここ1カ月、このような天候が数回以上繰り返されている。
そんな中、巣立ちを迎えた生きものがいる。コスタリカ北部の火山帯だけにすむ固有種のドウボウシハチドリ(Elvira cupreiceps)だ。オスの頭部が銅色に輝いて見えるので「銅帽子」。最近、ぼくはこのハチドリの子育てに立ち会うことができた。写真や動画で紹介しよう(ハチドリについては第68回と第69回でも紹介しています)。
ヒナに出会ったのは2018年の3月29日の朝。トイレで用を足していると、外から奇妙なさえずりが聞こえてきた。窓をそぉ~っと開けて、便器に上ってカメラを回した。
声の主は見当たらない、目の前から声が聞こえてくるだけだ(後に、トイレから聞こえた鳴き声の主を専門家に尋ねたところ、イエミソサザイのものとわかった)。
イエミソサザイ(Troglodytes aedon)のさえずり(11秒)
朝、トイレの外から奇妙なさえずり声が聞こえてきた。イエミソサザイは、アメリカ大陸に生息する茶色い10センチほどの鳥で、スズメ目キバシリ科に分類される。鳥の同定は同僚のJohel Chaves。
しばらくすると、ハチドリらしき鳥が飛んできて目の前で姿を消した。地上から高さ1メートルほどの枝に止まったようだ。でもそこには蜜を吸えそうな花は咲いてないし、ハチドリが休憩場所として止まるにしては低すぎるように見える。
トイレの裏へそっと出て、ハチドリが消えた枝に目をやると、そこに小鉢のような巣があった! 直径は約5センチ。植物の繊維をクモの巣の糸で綴ったもので、地衣類やコケで飾られている。
巣の中には、こげ茶色のハチドリのヒナが2羽。心地よさそうに寝ている様子だった。トイレを使う際は、余計に静かにしようと心得ることにした。