第115回 ナマケモノは小さな生き物たちのスローでエコで暖かい「宇宙」だ
日本は年度末でみなさん慌しいかもしれないので、今回はナマケモノ(樹懶)で一息ついていただきたい。ここ15年ほどコスタリカで撮りためた写真と共に紹介します。
ナマケモノはコスタリカ(スペイン語)ででペレソソ(perezoso)と呼ばれていて、意味は、「怠(だる)い、怠慢な、だらけている、ぐうたら者」。日本語や英語(sloth)の名前と同じような意味だ。
その名のとおり、この動物はあまり動かず、動いてもスロー。体も地味な色合いなので森の中で目立たない。どうやら1日10時間ほど眠るそうなのだが、ナマケモノは決して怠けているわけではない。それが彼らの生き方、生態なのである。
食が細く、植物の若葉や新芽などを1日約8グラムしか食べないという。代謝率が低く、わずかなエネルギー源をきちんと消化させ、活動のために使用するので「エコな生活を送っている」と言っていい。
こんな生活だから、糞と尿の排泄は1週間に1回程度で、オモシロいことに、樹上から地上へとわざわざ降りて、木の根元辺りで用を足す。
ナマケモノの特徴である前脚と後脚の指は、木の枝に引っ掛けて、ぶら下がれるようなフック状になっている。前脚は体の割合からすると長く(上の写真)、木の幹に抱きついたり、枝からぶら下がったりして、樹上を移動する生活に適している。
ナマケモノの仲間は中南米に生息し、現在6種が知られている。コスタリカで見られるのはこのうち2種。前脚のかぎ爪のような指が2本のホフマンフタユビナマケモノ (Choloepus hoffmanni)と3本のノドチャミユビナマケモノ(Bradypus variegatus)だ。後脚の指の数は両種とも3本。両種はそれぞれフタユビナマケモノ科とミユビナマケモノ科に分類されている。
この2種は、顔つきや大きさ、毛の色や模様でも区別できる。ミユビナマケモノは、小型でグレー、顔の模様がおっとりとした「たれ目」。フタユビは、ミユビに比べ気持ち大きめ。毛は薄茶色で少し長く、顔は白っぽく、たれ目模様はない。
首都サン・ホセ近郊にあるコスタリカ大学のキャンパス内にもこの2種のナマケモノが意外とたくさんすんでいる。大学生がナマケモノということではない。話によると、保護された野生のナマケモノが、10~15年ほど前にキャンパス内の保全林に放されたということだ。そして、キャンパス内で繁殖をしている。ぼくも両種の子連れのお母さんナマケモノを見たことがある。
木々の上でじっとしているところや動いているところを見かけるのだが、たまにキャンパス周辺の大道路に出てきて、電柱に登っているものや、電線にぶら下がっているものを見かける。見ているとどうも危なっかしい。
じっとしているときは、たいてい丸まっていて、スズメバチの大きな巣か、樹上生のシロアリの巣のように見える。