チョウやガの幼虫であるイモムシやケムシたちは、草木の葉などをたくさん食べ、そしてたくさん排泄する。そんなフンが、葉の上に落ちていたり、茎にくっついていたりすることがある。
形はほぼ球形か気持ち楕円形で、大きさは2~5ミリ程度。色は茶色から黒っぽいこげ茶色をしていて、表面はシワが入ったように少しデコボコしている。
そんなフンにそっくりなツノゼミが、中南米の熱帯雨林から雲霧林に生息している。ムシノフンツノゼミ(Bolbonota属)の仲間だ。
ここでクイズです。下の2枚の写真、どっちがツノゼミだかわかりますか?
答えは最後のページに拡大写真とともに発表しますが、今回はこのムシノフンツノゼミの卵や幼虫を含め、興味深い生態を紹介します。
ムシノフンツノゼミの仲間はどれも「シンプル」な装いながら、たくさんの種がいるため、種を同定するのが極めて困難。まだまだ新種だらけのグループと言っていい。でも詳しく見ていくと、かたちも大きさも色も種ごとで微妙に違っていて、調べがいがある。
ツノは翅の上後方に伸びるヘルメット型で、デコボコして、シワが入ったようなイモムシのフンのような質感がある。脚は平たく幅広で、止まっているときに全体を丸く見せるのに役立つ。番外編13で紹介したマンマルコガネに繋がる「ロボット系」の形態だ。
ガの幼虫を飼育して、ほぼ毎日フンと向き合っているぼくは、フンに擬態しているこのツノゼミのことも愛おしく感じる。
葉の上にぽつん!と黒くて丸い物体があると、イモムシのフンなのか、ムシノフンツノゼミなのかわからないことも多い。そんなときは顔をフンに近づけて、ジーッと吟味してみる。それでもわからなければ、指でそーっとつまんでみる。つまむ直前にピョーン!と瞬間移動するように飛んで逃げれば、それはムシノフンツノゼミだ。興奮する(笑)。
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