第136回 イモムシのうんちにそっくりなツノゼミ

マメ科の葉の裏側に産みつけられた3つの卵の塊。このように、卵の塊がかたまって産みつけられていることがある。卵を「見守る」メスたちが近くの茎にいた。
マメ科の葉の裏側に産みつけられた3つの卵の塊。このように、卵の塊がかたまって産みつけられていることがある。卵を「見守る」メスたちが近くの茎にいた。
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 ムシノフンツノゼミは、卵も独特だ。1匹から数匹のメスたちが、産んだ卵を近くで見守っているところに出会う。

 メスは、塊で産んだ卵を、白っぽいマシュマロかムースのような少し粘着性のある泡状の物質で「デコレーション」する(この様子の動画を下に掲載)。この泡状の覆いは、全体の大きさが3~7ミリ程度と小さいが、見た目はカマキリの卵嚢のような雰囲気がある。

パティシエのようなツノゼミ、ムシノフンツノゼミのメス
まるでケーキをデコレーションするかのように、葉の上で泡状の物質で卵を覆っていく。葉を裏返して撮影。

 なんのために泡状の物質で卵を覆うのだろう? これまでに紹介してきたツノゼミの場合、メスは茎や葉脈の中に卵を埋め込み、卵を抱くように守っていた。今回のムシノフンツノゼミは植物の組織の中に卵を埋め込まない。むき出しになった卵を乾燥や風雨、アリやアシナガバチなどの捕食性の天敵から守るために、覆いをするのだろう。

卵塊の断面。葉の上に縦に並んだ白い卵の上を泡状の物質が覆っている。
卵塊の断面。葉の上に縦に並んだ白い卵の上を泡状の物質が覆っている。
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 でも覆いは、すべての天敵を抑える役割を果たすわけではない。卵に寄生する小さなハチは、覆いの隙間か薄くなった部分から産卵管をムシノフンツノゼミの卵へと突き刺し、寄生する。あるヒラタアブ(ハナアブ科)の一種の幼虫は、覆いを破って中の卵を食べつくし、オモシロイことに覆いの中でサナギになるのである(下の写真)。

 次のページは<幼虫はフンに似ていなかった>です。

ムシノフンツノゼミの卵の天敵、ホソハネコバチ科のメスが泡状の覆いの中にある卵に産卵(寄生)しているところ。撮影地はコスタリカの首都サン・ホセ近郊。
ムシノフンツノゼミの卵の天敵、ホソハネコバチ科のメスが泡状の覆いの中にある卵に産卵(寄生)しているところ。撮影地はコスタリカの首都サン・ホセ近郊。
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泡状の覆いの中の卵を捕食しているヒラタアブ亜科の幼虫。泡状の覆いの中(中央)でサナギになるので、ムシノフンツノゼミの卵を捕食することに特化している可能性が高い。
泡状の覆いの中の卵を捕食しているヒラタアブ亜科の幼虫。泡状の覆いの中(中央)でサナギになるので、ムシノフンツノゼミの卵を捕食することに特化している可能性が高い。
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泡状の物質の表面の接写。
泡状の物質の表面の接写。
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