京都大学野生動物研究センターの菊池夢美研究員は、アマゾンマナティーを研究するための方法(バイオロギング)と、機会(フィールドミュージアム構想への日本からの協力)を得た。

 今のところ、ブラジルでの菊池さんの仕事で大きな比重を占めるのは、保護されたアマゾンマナティーの野生復帰計画だ。赤ちゃんの頃に保護されて、そのまま飼育されていた個体を野生に戻すというのは、相当な困難が予想され、きめ細かなケアが必要だ。長期的なモニタリングをしなければならないのは論を待たないが、リリースした直後にマナティーたちがどんなふうに環境に適応していくのか、細かく知っておく必要もある。菊池さんが使用するバイオロギングの手法は、その点で、最適だ。自然な生息地に放流されたマナティーが、どのように行動し、適応していくのか、リリースされた瞬間から数日間とはいえ「一挙手一投足」をすべて記録できるのだから。

 必ずしも成功とは言えなかった2008年-09年のリリースの時にも、菊池さんはその点を期待され、09年に放流した2頭にデータロガーを取り付けた。その結果、非常に興味深い結果が得られ、カイギュウ類研究者からは驚かれた。

フィールド調査中の菊池夢美さん。
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「場所は、マナウスから少し上流のブラックウォーターのクイエイラス川というところで、合計2頭、2日連続で1頭ずつ放流したんです。マナウスの国立アマゾン研究所の水槽で9年間飼育されていた個体です。放流時には、雨季で川の水位が上昇していて、氾濫によって水没した森林が多数ある時期でした。それぞれ、放流6.7時間後、12.4時間後のデータまでを取って、回収しました。センサーは、遊泳速度、潜水深度、水温、3次元の加速度と3次元の地磁気を見るものでした。それで、分かったのが、放流後の動きです」

 地磁気のデータが座標軸を提供し、他のセンサーから速度、加速度、水深などが分かる。それらを総合すると、移動距離や場所まで分かるという仕組みだ。その結果浮かび上がったのは──

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