第4回 「あ、これだ」と思ったものの研究者になるには

「最初は、昼間、明るいときのほうが、網などを回避できるだろうと予想していました。実際、網を避ける行動は昼間の方が若干多い傾向がありましたが、夜間にも多く見られました。そして、昼間なら昼間で見ず知らずの網を確かめに近寄ってきて触りますし、夜なら夜でそうっと近寄ってきては、口や体に生えている感覚毛を使ってサワサワ、サワサワして確かめるんですよ。これはフロリダマナティーでもよく報告されてます。見慣れないものがあると、最初警戒するんですけど、好奇心旺盛なのでどんどん近寄ってきて、確かめようとして積極的に触っているうちに縄に絡まってしまって溺死したりするそうです。だから、予想に反して夜間でも障害物を認識する能力があるけれども、積極的に触れる行動が昼夜問わずあるため、混獲の危険性は時間帯を問わずある。混獲回避のためには、絡まらないような網の素材や構造、設置場所などを検証していく必要があります」

 マナティーが好奇心旺盛だというのはよく言われるが、それが「昼も夜も」だったとは……。

 その後、修士課程に進み、東京大学大学院国際沿岸海洋研究センターの研究室で、東南アジアのジュゴンの研究をする予定だったものの、残念ながらその研究計画自体が立ち消えになる。しかし、ここで菊池さんは重要な出会いをしている。現在のフィールドの生物学で、必須アイテムの1つであるデータロガーだ。生き物に取り付けてデータを取ることから、その研究手法をバイオロギングなどとも言う。非常にパワフルな研究方法で、「「研究室」に行ってみた。」連載の第1回目だった極地研の渡辺祐基さんや、東大大気海洋研(当時)の塩見こずえさんのインタビューでも、その点を強調した。

 簡単におさらいすると、加速度、地磁気、水温(温度)、水圧(気圧)といったセンサーをコンパクトな筐体にまとめて、一定期間記録できるデジタルデバイスである。回収しないとデータが取れないという欠点があるが、電波でデータを飛ばすものより、ずっときめ細かで大量のデータが手に入る。デジタルのロガーは日本でいち早く実用化され、ひとつの研究トレンドを作りだしたという点で、画期的なものだ。

現在のロガー。
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