「80年代ぐらいから、私の先輩にあたる研究者たちが、こういった観測を少しずつ積み重ねてきて、富士山にも地震だとか活動があると分かってきたのをセンセーショナルに受け取られたというのがあったかもしれません。地元でも、観光に打撃だとか、地価が下がるとか言われたというのを上の代の研究者から聞いたことがあります。でも、2000年の低周波地震の前後から、風向きが変わってきまして、今では富士山周辺の自治体さんがしっかりハザードマップを作って、避難訓練もやって、富士山の火山防災をちゃんとやりましょう、ということになってますね。富士山の火山マップをつくりましょうってことになったのが、2001年なんですね」

 富士山の噴火にまつわる研究は、とっくにサイエンスとして受け入れられ、それが行政の施策としても落とし込まれているのだそうだ。噴火の規模や火口の場所によっての溶岩流のシミュレーションを見せてもらったが、御殿場市、静岡市、裾野市などが被害を受けるシナリオが想定されている。はじめて見るとショッキングだが、地元の人などにしてみると織り込み済みの情報なのだろう。


(提供:藤田英輔)


東側、南西側ともに最悪のケースを想定した場合だが、マグマの動きは遅く、人が避難する時間的余裕はあるという。(提供:藤田英輔)

 こういう火山防災の意識が高まっているのは、富士山周辺だけではない。

「富士山の噴火については、本当によく聞かれるんですけど、実は、本当に噴火したら、むしろ箱根のほうが気がかりだなという意識があります。交通が大体、すべて箱根の山を越えてますよね。国道1号にしても新幹線にしても。ですので、箱根で噴火があると、交通が分断されてしまう。ただ、マグマを大量に出す噴火っていうのは、箱根は有史以来してないので、経験則ですけど、多分、水蒸気爆発だろうと。火砕流とか火砕サージとかいうのが、もし出たら、これが一番、怖いんです。新幹線並のスピードで駆け下ってくるので、箱根なんかでも、もしこれが起こったらどうなるかっていうような警戒は一応してます──」

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