火山の観測技術が向上したり、観測手段が増えたりすることで、これまで捉えられなかった予兆を捉えることができるようになった。

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 2015年の口永良部島の噴火では、予兆をとらえ防災にうまく繋げることができた。また、箱根山の活動も、前回みたように詳細にモニターされていて、やはり何かが起きそうなら予兆を捉えられる見込みはかなりありそうだ。

 それがゆえに、興味深い現象を藤田さんたち火山物理学者は、目の当たりにするようになってきている。

「噴火未遂、英語では、failed eruption、失敗した噴火、という意味です。地殻が膨張して、噴火するぞと思っても、途中で止まってしまって、何も出さないで終わってしまうようなやつ。この前の桜島で、レベル4の警報で避難準備というところまで行きましたが、あれ、結局、未遂のまま終わりました。今の火山物理の知識では、なんであそこから止まるんだというものでしたが、これまではああいうものも見逃していたのかなと思います」

桜島の有村観測坑道における傾斜計および伸縮計の変化(2015年8月15日~19日16 時)。8月15日に山体の膨張を示す急激な変動が起きた後、その状態が継続した。「なぜここで止まるのか」というほどの激しい変化だという。(「火山噴火予知連絡会拡大幹事会第10図」:気象庁ホームページより)
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 噴火未遂。failed eruption、というのは、物理学らしい言い方かもしれない。噴火は人間の生活上望ましくないので、「噴火回避」「噴火にならずにすんだ」とか言いたいところだが、あくまで、噴火という物理的なプロセスが途中で止まって実現しなかったという意味で、噴火失敗、failedと表現している。今後、噴火未遂のデータがたまると、どんな時に未遂で終わり、どんな時に実際に噴火するのか、理解が深まると期待される。

 噴火未遂の観測では、活性化した活動が、何かの理由で、また収まっていくのを観察することになるわけだが、実は、藤田さんはそれに近いものを研究キャリアの初期から見続けている。

 対象は、なんと富士山!

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