これだけの観測ができるので、現在の火山噴火予測は、条件がよい時にはぴたりとハマる。具体例としては、今年(2015年)5月の口永良部島。かなり前から兆候はあって、さらに数日前には、火山研究者たちがいよいよ間近と判断して、住民説明会も開いた。

「避難はこうするっていうのも住民に伝わっていて、いざ噴火という時にもスムーズに順次全島避難できましたね。火砕流が出たらこっちを流れるので、この避難所に逃げろ、というふうに事前に伝えてもあって。実際に住民の方々の意識とか、自治体の長が責任をもって判断をすることとか、いろいろな要素もあって人的な被害を抑えられたんです」

 火山噴火の予知は、本当に直前のことならば、非現実的な話ではないし、実際に、このように役だった例もあるのだ。

 ただし、現在の火山噴火の予知には、いくつかの課題がある。

 ひとつは、「水蒸気噴火(2014年の御嶽山など)のように噴火としては小規模なものや、カルデラ噴火のように超大規模なものについてはよく分からない」こと。これについては、別の章で立ち返る。

 そして、もうひとつ、意外な点。

「噴火予知がある程度できるとしても、実は、噴火の終わりについては、我々、わからないんですよ。そこが地震予知と噴火予知の最大の違いで、地震の場合は本震がバーッて起きて、あとはこう、指数関数的に余震が減っていくので、もう終わりですっていうのが基本的には言えるんです。でも、火山の場合はマグマが下がっていっても、またいつ上がってくるか分からない。10キロぐらいのところにマグマ溜まりがあるって言いましたけど、そのさらに深いところにも供給源があって、でも地表からでは、今のところ技術的には、20キロか30キロぐらいまでしかわかんないんです」

 島の火山で全島避難した際、住民がいつ帰島できるのか、なかなか分からない所以である。火山と避難と帰還をめぐる悲喜こもごもは、たしかにずっと繰り返されてきたものだ。

モニターに映し出されている口永良部島の噴火のときは、進歩した観測技術と防災対策のおかげで、スムーズに全島避難を実現できた。だが、噴火の終わりの予知は極めて難しい。
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つづく

※第3回「富士山の噴火を怖がり過ぎずに済むこれだけの理由」は明日10月2日公開の予定です。

藤田英輔(ふじた えいすけ)

1967年、島根県生まれ。理学博士。防災科学技術研究所地震・火山防災研究ユニット総括主任研究員。東北大学連携客員准教授。山梨県富士山科学研究所特別客員研究員。1993年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了、同年防災科学技術研究所入所。入所以来、火山観測網の運用やそのデータ解析、数値シミュレーションなどにより火山噴火のメカニズムの解明についての研究に従事。近年は特に地震・火山噴火の連動性に関する評価や地下でのマグマ移動現象の解明について取り組むとともに、欧米やアジアの火山コミュニティーとの連携強化に尽力している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社文庫)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。近著は、『雲の王』と同じく空の一族の壮大な物語を描いた『天空の約束』(集英社)、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』(ちくまプリマー新書)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。2015年10月に有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を開始した。

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