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「たしかに最近、火山活動が賑やかに見えるのは事実なんです。過去15年ぐらい、いや、90年代から見ても、間違いなく活発なんですね。でも、それは、これまでが静かすぎたんです。1991年には雲仙普賢岳の噴火があって、2000年には、三宅島の噴火とか有珠山の噴火がありました。でも、それらを除いたら、その後、ニュースになるような噴火がほとんどない時期が続いていました。ですので、私たちが思うのは、この15年ほどが静かすぎたというところです」

 なるほど、「最近多い」というのではなく、21世紀になってからの15年ほどが「静かすぎた」だけなのか。

「ところが、やはり難しいのは、もう少し大きなスケール、例えば百年っていう単位で見ると、今は、活動的な時期じゃないかなとも取れるんです。東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震の直後にもよく言われましたが、火山活動や地震が活発だった9世紀に非常に似てきているとやっぱり思っていまして。それを考えると、ここ1~2年、活発化しているというよりも、2000年の三宅、有珠あたりからもつながっていて、一連の活発な時期に入っているのかもしれない、と」

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 なんと、「静かだったこれまで」を含めて、活発な時期の一部であるという解釈。時間スケールを変えてみると、違った傾向が見えてくることがよくあるけれど、ひょっとすると、長期的には活発な時期にあって、その上でたまたま少しの間静かな時期があった、という解釈だ。

 さらにもう一点、物事を単純に言えない理由がある。

「最近、火山が噴火する前の異常を我々が検知する能力が非常に上がってきています。例えば、8月の桜島は、結局、噴火しなかったので、『噴火未遂』というような言い方を我々はするんですけど、以前だと単に見逃していたかもしれないわけです。でも、今では、GPSですとか、いわゆるSAR衛星(合成開口レーダーという観測装置を搭載した人工衛星)、日本のものだと2014年から運用されている陸域観測技術衛星の『だいち2』ですとか、リモートセンシングが発達して、地殻変動が非常にとらえやすくなったということがあります。今年の箱根に関しても、小さな噴火はありましたが、以前は捉えにくかった変動を捉えています」

 ああ、こういった現象は思い当たるフシがある。感染症などの調査の仕方が変わったり、がん検診で感度の良い方法が導入されたりしたとき、報告され認知される患者数が一気に増えることがある。あれと似た理屈だろうか。

 これまでのところを、ざっくりまとめると──

 日本の火山が活発化して見えるのは、ごくごく短期的なレベルでは「これまで静かすぎた」とか「検知能力がアップしたから」で説明できることもあるかもしれないけれど、百年のレベルでは活発化しているかもしれないと専門家は疑っている。

 というところか。

 質問があまりにざっくりしていたので、ざっくりした回答にならざるをえないとみた。

 ちらりと出てきた2011年の東北地方太平洋沖地震との関連もぜひ知りたいし、火山噴火の物理的な側面や観測について、もう少し掘り下げてうかがっていくのが、やはり最適な方法なのである。

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つづく

※第2回「予知できる噴火、できない噴火」は明日10月1日公開の予定です。

藤田英輔(ふじた えいすけ)

1967年、島根県生まれ。理学博士。防災科学技術研究所地震・火山防災研究ユニット総括主任研究員。東北大学連携客員准教授。山梨県富士山科学研究所特別客員研究員。1993年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了、同年防災科学技術研究所入所。入所以来、火山観測網の運用やそのデータ解析、数値シミュレーションなどにより火山噴火のメカニズムの解明についての研究に従事。近年は特に地震・火山噴火の連動性に関する評価や地下でのマグマ移動現象の解明について取り組むとともに、欧米やアジアの火山コミュニティーとの連携強化に尽力している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社文庫)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。近著は、『雲の王』と同じく空の一族の壮大な物語を描いた『天空の約束』(集英社)、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』(ちくまプリマー新書)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。2015年10月に有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を開始した。

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