第5回:ついにヒミコを発見!

 ケック望遠鏡の観測前日(11月4日)、私はハワイ島コナの空港に降り立った。タラップに足を踏み出すと、熱帯気候特有の生暖かい風。空は一面分厚い雲に覆われていた。土砂降りの雨のなか、レンタカーを運転して、ワイメア市にあるケック天文台本部の宿舎へと向かった。夕方、宿舎に着くとすぐに、インターネットでマウナケア山頂の衛星写真と天気予報を確認した*1。衛星写真を見ると、マウナケア山はおろか、ハワイ島全体が赤色になっており、厚い雲に覆われていることが分かった。

*1 マウナケア山頂の衛星写真と天気予報はMauna Kea Weather Centerと呼ばれる機関(マウナケア山頂にある天文台が出資し、ハワイ大学天文学研究所が運営)が提供している。最新の衛星写真と天気予報はそれぞれhttp://mkwc.ifa.hawaii.edu/satellite/とhttp://mkwc.ifa.hawaii.edu/forecast/mko/ で確認できる。

 マウナケア山の天気予報には「今後3日間は、現在よりも濃い霧と高湿度、氷で覆われる」と書かれていた。今回の観測は駄目だろう。もう一度観測提案書を書いて、観測所に認めてもらって――そして、また来年に来るしかない。期待がしぼんで、肩を落とした。

 一晩休んで、観測当日になった。宿舎で目が覚めるとすぐに最新の衛星写真と天気予報を確認したのだが、やはり状況は変わっていなかった。ひいき目に見ても今夜観測できるようには思えない。だが、万が一ということもある。急に雲がなくなって観測できることだってあるかもしれない。その場合は貴重なケック望遠鏡の時間を1秒たりとも無駄にできない。そう思いながら、昼過ぎから観測の準備を始めた。用意しておいたマスク(連載第4回参照)を導入して校正データを取得するといった作業を一通りこなした。ただ、今回の観測が駄目だろうと思えば思うほどやる気が失われていくのが自分でもわかった。