記者発表の日の晩は、国立天文台の近くにあるホテルに泊まった。帰国直後で時差ボケもあったが、翌朝は自然に目が覚めた。朝の6時半頃だったろうか。何気なくテレビをつけると、画面には私が見つけた原始銀河団が映っていた。民放のニュース番組だった。その後、近くのコンビニに立ち寄ると、ニューススタンドに丸めて並べられていた、いくつかの主要紙一面に見覚えのある画像が見え隠れしていた。記者発表をした昨日までは、自分だけで見ていた画像が、いつのまにか世界中の人に見られている。内心誇らしいという気持ちも無くはなかったのだが、それ以上になんとも言えない不思議な感覚に襲われた。そして、この発見に何か間違いがあったら取り返しがつかないことになるぞ、という底なしの恐怖も同時に覚えたのであった。

 このようにしてB計画が完了した。B計画はA計画を行うための前座だと考えていた私は、とうとう研究の5合目に到達した気分だった。そしてこれから、私にとって一番重要なA計画が始まろうとしていた。

大内 正己(おおうち まさみ)

1976年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。アメリカ宇宙望遠鏡科学研究所ハッブル・フェロー、カーネギー天文台カーネギー・フェローを経て、現在、東京大学宇宙線研究所准教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の科学研究員を併任。研究テーマは、宇宙史初期、銀河形成、宇宙の大規模構造、観測的宇宙論。平成19年度日本天文学会研究奨励賞、平成26年度文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞。平成25年にBeatrice M. Tinsley Scholarに選出。著書に『宇宙の果てはどうなっているのか? ~謎の古代天体「ヒミコ」に挑む』(宝島社)や『宇宙』(小学館の図鑑NEO)などがある。

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