第2回:最遠の宇宙へ向かう、はじめの一歩

 そうこうしていると、観測所スタッフから耳を疑うような言葉をもらった。ToO観測がもう終わるから君たちの観測準備を始めてよい、と言われたのである。当初は大半の時間がToO観測に使われてしまうだろう、と知らされていたのだが、実際のところ今回のToO観測は短時間で済んだのである。結局失ったのは数時間だけだった。不幸中の幸いである。

 すばる望遠鏡が私たちの手に戻るとすぐに、Suprime-CamをSXDS天域に向けた。そして、狭帯域フィルターを通して画像データを撮りまくった。できるだけ感度を上げるため、観測では長い露光をする。しかし、ずっとシャッターを開けっぱなしで撮ると望遠鏡の追尾エラーで星像が伸びてしまったり、検出器(CCD)がサチュレーションを起こしてしまったりする。そこで実際の観測では、20分の露光でシャッターを閉じ、また同じ位置で露光をするということを繰り返した。このようにして、何枚も何枚も同じ位置で画像データを撮ったのである。

 このようにして3日間の観測を終えた。ヒヤリとする場面もあったが、このB計画の観測は順調に進んだ(今考えると、この後に控えるA計画とは比べ物にならないほどスムーズに進んだ)。このようにして得たB計画の画像データは、テープ媒体に記録され、研究室に送られた(現在ではインターネット経由でデータをダウンロードする形式になっている)。

 このデータにはどのような遠方宇宙の姿が記録されているのだろうか? 貴重なすばる望遠鏡の観測時間を使ったのだが、本当に面白い結果が出せるのだろうか? 私は期待と不安を抱きながらハワイを後にした。

大内 正己(おおうち まさみ)

1976年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。アメリカ宇宙望遠鏡科学研究所ハッブル・フェロー、カーネギー天文台カーネギー・フェローを経て、現在、東京大学宇宙線研究所准教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の科学研究員を併任。研究テーマは、宇宙史初期、銀河形成、宇宙の大規模構造、観測的宇宙論。平成19年度日本天文学会研究奨励賞、平成26年度文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞。平成25年にBeatrice M. Tinsley Scholarに選出。著書に『宇宙の果てはどうなっているのか? ~謎の古代天体「ヒミコ」に挑む』(宝島社)や『宇宙』(小学館の図鑑NEO)などがある。